Home > トピックス一覧 > 第三十四回「四国こんぴら歌舞伎大芝居」製作発表が行われました

トピックス

第三十四回「四国こんぴら歌舞伎大芝居」製作発表が行われました

 香川県琴平町の金丸座にて、4月7日から 第三十四回「四国こんぴら歌舞伎大芝居」が始まります。今年は公演に併せて八代目中村芝翫四代目中村橋之助三代目中村福之助が襲名披露を行います。1月24日(水)都内にて取材会が行われ、中村芝翫、中村橋之助、中村福之助、中村梅玉が公演へ向けての思いを語りました。

【中村芝翫】
 一昨年の10月から始まりました襲名披露興行も、歌舞伎座を皮切りに大阪松竹座、博多座、地方巡業と参りまして、昨年の12月には京都の顔見世興行、そして4月の「こんぴら歌舞伎大芝居」が大きな襲名興行の最後となります。19年振りに伺わせていただくことになりました。19年前は、夜、亡くなった十八代目中村勘三郎の兄をはじめとして皆で集まって、あんな芝居をしよう、こんな芝居をしようと熱く語ったりもしました。お陰様でどうにか芝翫という大きな名前を頂戴し、息子共々襲名披露ができるということ、本当に感謝申し上げます。

 昼の部では『魚屋宗五郎』をさせていただきます。自分の中でも、世話物というものは大事にしていきたいお芝居です。夜の部では中村梅玉のお兄様、中村魁春のお兄様の胸を拝借して『鎌倉三代記』をさせていただきます。こちらは私共の芝翫型の形でやらせていただきます。
 『鞘當』では劇中の口上がございます。本来ですと、不破と名古屋山三と留男の三人しか出てこないですけれども、皆さん揃いますので華やかな演出になると思います。金丸座は何か自由というか、ホッとするような空間を創れる劇場ですので、今度の劇中口上では、ちょっと面白いことができたら良いな思います。

 歌之助はまだ高校在学中でございますので、今回は参加いたしませんが、襲名が始まりまして、子供達を見ていると一回りも二回りも大きくなったなと思います。襲名の期間中、親として大したことは教えていませんが、これが歌舞伎界の素晴らしいところであるというのは、先輩方をはじめ周りの方々がよく育てていただいて、教えを請いているなと思います。まだまだこれから、やっとスタートラインにたったところですから、これからの各々の精進が大事だなと思います。

 金丸座は亡くなった父(七代目中村芝翫)も大好きでして、亡くなる前に、もう一度琴平に行きたいとよく言っておりました。今回19年ぶりに芝翫襲名で、しかも親子で伺えるということ、子供達は初めてですし、何か新しい発見ができたらいいなと思っております。四国の方はもちろんですが、全国の方に足を運んでいただけるような魅力溢れるお芝居にしたいと思います。


【中村橋之助】
 一昨年の10月から東京、大阪、博多、京都と襲名披露をさせていただきまして、こうしてこの度こんぴらで襲名をさせていただけるということを非常に嬉しく思っております。実は、こんぴらは初お目見得でございます。先輩方や父からよくお話を聞きますが、昔の芝居小屋という空間、お客様と距離の近い空間で一ヶ月お芝居をさせていただくということは初めての経験です。お客様の反応とか、どのようにしたらお客様に喜んでいただけるのか、一ヶ月勉強をしながら勤めて参りたいと思います。

 昼の部では『鞘當』の不破を、夜の部は『義経千本桜 鳥居前』の忠信と『石橋』の獅子の精を勤めさせていただきます。『鞘當』では、憧れでもある梅玉のおじ様の名古屋山三で不破をさせていただけるという夢のようなことでございます。一ヶ月しっかりと梅玉のおじ様の胸を拝借して、いろいろな芸を盗んで勉強して大きくなれればと思います。夜の『義経千本桜』というお芝居は非常に大切なお芝居で、大役でもある忠信を勤めさせていただけるということは大変嬉しいことです。最後、引っ込みの狐六方は、私にとりまして、幕外での六方が人生で初めてのことなので楽しんで勤めたいと思います。『石橋』の獅子は尾上松也のお兄さんと、福之助と3人で勤めさせていただきます。公演の最後の狂言ですので松也のお兄さんの胸をお借りしまして、お客様に気持ちよく帰っていただけるように精一杯勤めたいと思います。

 父からは、金丸座はお客様方との距離が近いので凄く喜んでくださるが、自分達の芸が荒れないように、やるべきことをしっかりやりなさいと言われています。常日頃から言われていることですが、クギを刺すように言われました。


【中村福之助】
 襲名も一年半やって参りまして、終盤になってきました。こんぴら歌舞伎は初めて出させていただきますし、江戸時代の名残のある芝居小屋に出させていただくというのも初めてです。その雰囲気の中でお芝居ができるということも楽しみで、凄くワクワクしております。

 昼の部の『鞘當』では口上をさせていただいて、『魚屋宗五郎』では三吉をやらせていただきます。三吉は、大学生になって始めて出た舞台のお役です。当時は、手も足も出ないという感じで、何もすることができないまま終わってしまった一ヶ月でしたので、以来父に、もう一度リベンジをさせていただきたいということを言っておりました。今回それが実現して、再び三吉というお役をさせていただけることは凄く嬉しいです。いろいろな先輩方の息遣いや雰囲気を間近で学ばせていただき、精一杯勉強をさせていただきたいと思います。
 夜の部の『鳥居前』では弁慶をさせていただきます。以前、北京公演の時に藤太をさせていただいて、弁慶は兄が演じていました。その時に舞台袖から兄の弁慶を見ておりましたので、その役をさせていただけるということは凄く楽しみです。最後の『石橋』では松也のお兄さんの胸を借りて、兄と共に出させていただきます。

 お客様との距離が近いので、お客様の反応が凄く近くで感じられるということを聞いています。それがどんな感じなのか、今は楽しみです。皆様に喜んで帰っていただけるように、帰りのお客様の話題の中に“福之助”というワードが入れるように勤めさせていただきたいと思います。


【中村梅玉】
 大好きな金丸座、こんぴら歌舞伎大芝居に7年振りに参加することができて、本当に今からワクワクしております。特に今回は、新芝翫の襲名ということもあり、チームワークの良い舞台が出来上がると思います。

 襲名の大切なところは、そこで大きな役をやらせていただいて成果を出すというところです。芝翫さんの息子さん達も、その役を一生懸命きっちりとやって、ちゃんと成果を出しているというところが良いところだと思います。父(六代目中村歌右衛門)がよく「襲名というのは周りの皆様の応援があってこそできるのであって、その襲名が終わったからといってそれでおしまいではない」と言っておりました。襲名が終わったところがスタートラインで、問題は襲名の後の舞台がちゃんとできなければいけないということです。襲名の時は良いお役をやらせてもらえるが、普通の興行の時はまだまだ若手ですから小さな役になってしまうこともあるでしょう。その時にちゃんと成果を出すということが大切なことだと思います。

 大好きな金丸座、大好きな琴平の町、いつも夕方には自分の出番が終わりますので、夜の食事の前に琴電に乗るんです。都会の雑踏の中で暮らしている人間にとっては、あの夕方の田園風景が凄く良いんです。今回も、毎日、電車で往復して夕方の散歩をしようと思います。ゆっくりと、一月、楽しみたいと思います。