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12月国立劇場「通し狂言 伊賀越道中双六」出演者が意気込みを披露


 12月国立劇場では「 通し狂言 伊賀越道中双六(いがごえどうちゅうすごろく)」が上演されます。
 公演に先立ち、記者会見が行われ、出演者らが公演への思いを語りました。

中村吉右衛門
 今回は44年ぶりに「岡崎」が上演されます。実父の初代松本白鸚が以前にやりましたが、その時私はまだ子どもでしたから、間道を抜ける時、鳴子がカラカラと引っ掛かってする音が印象に残っているのと、二刀流を使って立ち廻りをしていたのを覚えているだけです。久々の上演に花を添えて、東蔵さん、歌六さん、芝雀さん、又五郎さん、錦之助さん、そして新しい倅の菊之助さんが共演してくださいます。話としては、とても地味なものでございますけれども、一所懸命お稽古して、派手やかな芝居にしたいと思っております。

 敵討ちのために、相思相愛の妻を離縁したり、自分の実の子供まで殺さなくてはならないという侍の世界は、実は憧れるようなものではなく、とても大変な世界だということが、この『伊賀越道中双六』には良く書き込まれています。ただ敵討ちは大変だというだけではなく、人間の性というものは悲しいもの、それを貫き通して敵討ちをする、最後は大団円になってお客様に「ああ、良かった」と思っていただくためにも、莨(たばこ)切りと言われる「岡崎」の場を本当に良い芝居にして、皆さんに「大変だな」と思っていただけるような芝居を創り上げたいと思っています。

 今回は「沼津」が上演されず、志津馬の足の怪我が治る件がないので、今のところ志津馬が股五郎に傷つけられないことにするなど一部カットされる部分もございますが、全体的には丸本、元の本に忠実に上演し、助太刀に出立できる大内記の大きさというものが出せるようにしたいと思っています。菊之助さんが娘と結婚して、まだ舞台でご一緒していないものですから、実際に舞台でどのくらい気を使うのか、あるいは向こうが使ってくれるのかも楽しみです。舞台の上で倅と一緒に仇討という一つの目的に向かって進んでいくという事に、とても真実味がでるような気持ちがしております。


中村東蔵
 幸兵衛女房おつやを勤めさせていただきます。この度44年振りに「岡崎」が上演されますが、播磨屋さんのおっしゃっていました「芝居としてしっかりと、面白く、派手に」となるように勤めたいと思っています。44年振りということですが、私の元気なうちにもう一度上演していただけるようなお芝居にしたいと思っております。



中村歌六
 子供の時から父(四代目中村歌六)などに「莨切り」は面白いと伺っておりまして、常々「岡崎」という芝居を見たい、見たいと思っておりましたが、見るのではなく、ついに出演させていただくことと相成りました。それもなんと、吉右衛門お兄さんの剣術の先生・山田幸兵衛でございますので、少しでも強く見えるように頑張りたいと思っております。


中村芝雀
 政右衛門の女房お谷を勤めさせていただきます。政右衛門を追いながら敵討の気持ちを察し、大雪の中、少しでもお客様に感じていただけるような気持ちのあるお谷を勤めたいと思っております。女方はどちらかと言うと、歌舞伎のお芝居の中では耐えることが多い役柄ですが、殺された自分の子どもの悲しみなど表現することで、立役の敵討ちの精神、気持ちがお客様により伝わりやすくなるようにしていきたいと考えています。


中村又五郎
 誉田大内記、奴助平の二役を勤めます。誉田大内記は、政右衛門が助太刀に行くために御前試合でわざと負けたことを見抜き、助太刀に出立させる大きな殿様です。その後に出てくる奴助平、これはチャリ掛かったお役で、2つの違う役を演じさせていただくことになります。難しいとは思いますが殿様は大きさを、そして助平は可笑しみをお見せできればと思っております。


中村錦之助
 沢井股五郎を勤めさせていただきます。前回10年前にこの役を勤めさせていただきましたが、2度目ということで、今回はもっと敵役らしく、この敵役の為に皆が苦労している、というのが出るように、憎たらしく大きな敵役を創っていきたいと思っております。



尾上菊之助
 和田志津馬を勤めさせていただきます。播磨屋のお父さんの傍に出させていただくのが本当に楽しみです。志津馬は発端で股五郎の奸計に掛かり、それが原因で敵討が始まります。瀬川に惚れられたり、お袖に一目惚れをされたりと、非常に二枚目らしいお役です。ただ単に二枚目というのではなくて、敵を討たなければならないという苦悩が見えるように勤められればと思っております。