中村 歌六 (5代目) ナカムラ カロク

屋号
播磨屋
定紋
揚羽蝶、つるかたばみ、歌六梅
所属
伝統歌舞伎保存会会員

プロフィール

▼円熟の境地に達し、近年の充実ぶりは目覚ましい。口跡の良さ、切れの良い詰んだせりふ回しで時代から世話、立役から女方、老けを問わず役を掘り下げ、陰影に富んだ人間像を創り上げる。老け役での活躍が目立つが、一本芯の通った手強さがあるのがこの人の特徴。『逆櫓』の権四郎、『夏祭』の三婦などが真っ先に思い浮かぶ。久々に上演された『伊賀越』の「岡崎」は芸術選奨文部科学大臣賞に輝いたが、この人の山田幸兵衛がなかったら中村吉右衛門も「岡崎」を復活できなかっただろう。『石切』の六郎太夫の情愛、『合邦』の合邦道心の気骨、『すしや』の弥左衛門の一徹、『先代萩』の八汐の芝居っ気、『矢口渡』の頓兵衛の古怪で大時代な味わい、『三人吉三』の伝吉に見える老人の壮絶ないきざまなど、どの役も見逃せない。曾祖父・三代目歌六の百回忌追善で『松浦の太鼓』の松浦侯を勤めたが、かつて「杉の子会」や歌六襲名などでたびたび勤めた『大蔵譚(おおくらものがたり)』もまた見せてほしい。

〔石山俊彦〕

経歴

芸歴

▼1950年10月14日生まれ。四代目中村歌六の長男。弟は中村又五郎、いとこに中村時蔵、中村錦之助、中村獅童がいる。55年9月歌舞伎座『夏祭浪花鑑』の倅(せがれ)市松ほかで四代目中村米吉を名のり初舞台。73年名題昇進。81年6月歌舞伎座『一條大蔵譚』の大蔵卿で五代目中村歌六を襲名。

受賞

▼1969年12月『元禄忠臣蔵』の井関紋左衛門で、81年11月『菅原伝授手習鑑』道明寺の奴宅内で国立劇場奨励賞。74年重要無形文化財(総合認定)に認定され、伝統歌舞伎保存会会員となる。84年歌舞伎座優秀賞。95年松竹会長賞。96年眞山青果賞奨励賞。2001年十三夜会賞助演賞。07年12月『松浦の太鼓』の宝井其角などで、10年10月『将軍江戸を去る』の勝麟太郎で、14年12月『伊賀越道中双六』の山田幸兵衛で国立劇場優秀賞。10年第三十一回松尾芸能賞優秀賞。15年第二十二回読売演劇大賞優秀男優賞。同年芸術選奨文部科学大臣賞。15年度日本芸術院賞。18年紫綬褒章。

舞台写真