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【中村獅童】
昼の部の『瞼の母』は勘三郎のお兄さんに教えていただきました。お兄さんが勘九郎時代に忠太郎を勤めた際、弟分の半次郎をやらせていただいたのですが、沢山叱られ、沢山お稽古をしていただいた思い出が残っています。“いつか忠太郎をやりたい！”という思いで今日までやってきた、と言っても過言ではないほど思い入れの深い作品です。お兄さんは稽古中、あるセリフを言ったときお客様のように泣いて下さって･･･教えながら泣いて下さる方はそういらっしゃいません。心を込めて芝居をするという事を教えていただいたような気がします。
『毛抜』は團十郎のお兄さんのご自宅にお伺いして、手取り足取り教えていただきました。舞台稽古も観に来て下さって、歌舞伎十八番物の力強い、線の太い男を演じるにあたっての心、また、ある種セリフ劇でもあるので、膨大なセリフをいう時のコツなど、丁寧に教えていただきました。これも思い出深い作品です。『権三と助十』は先日、三津五郎のお兄さんにご相談にお伺いしました。ご病気を発表される直前にもかかわらず、役の肝となるところはこういうつもりで演じると良いよなど、沢山のアドバイスを時間をかけて教えて下さいました。
先輩方の歌舞伎に対する精神、そういうものを受け継ぎ、良い舞台を創りたい、創らなくてはならない。そしてそれが先輩方への恩返しになるのだと思います。精一杯大切に演じていきたいと思っています。

【市川右近】
昼の部では初役で『鳴神』を勤めさせていただきます。本年1月、大阪松竹座で同じく歌舞伎十八番物の『毛抜』を勤めさせていただきました折、市川宗家（團十郎）のお宅にお伺いし、ご挨拶させていただきました。ご挨拶はそれが最後になってしまいましたが、直接お目にかかってできたことが良い思い出になっていて、今も天国からエールを送っていただいているような気がいたします。歌舞伎十八番の名を辱めぬよう、懸命に相勤める所存でございます。
夜の部の『連獅子』は、私共の師匠、市川猿翁の演出でお目に掛けます。師匠の親獅子でずっと仔獅子を勤めて参りまして、そこから澤瀉屋の魂を沢山受け継がせていただきました。
中学一年生で東京に上京してから、毎年春には師匠の公演がここ明治座でございました。三代猿之助四十八撰にもなっている復活通し狂言の多くが、この春の明治座から誕生しております。その中で芝居作りがどういうものなのか、師匠の間近で勉強させていただいたことが、私の血となり骨となっています。明治座のお客様は、とても温かみのある方が多いので、コミュニケーションをはかり少しでも多くの皆様に歌舞伎を好きになっていただければと思います。

【市川笑也】
去年の11月に明治座で『傾城反魂香』のおとくを勤めさせていただき、（今年3月御園座の）『ぢいさんばあさん』では、るんというお婆さん役も勤めさせていただき、ここのところいろんな味がでるようになりました。
今回も、昼の部では『鳴神』におきまして雲の絶間姫を、夜の部では『毛抜』で小野春風を、最後の『権三と助十』では権三女房おかんを勤めさせていただきます。美女に立役、そして顔の色も肌色に近い長屋のおかみさんということで･･･こちらは初めての味でございます。
いろいろな味の笑也を観に来て下さい。観劇料よりもそれ以上の演技を披露し、お客様に「倍返し」したいと思っております（笑）。

【尾上松也】
明治座には初めて出演させていただきます。初出演でこうした大役を勤めさせていただくことを、非常に光栄に思っています。
昼の部では『瞼の母』で忠太郎の弟分の半次郎を勤め、その後『供奴』を一人で踊らせていただきます。夜の部は『毛抜』で秦民部を、最後に『権三と助十』で助十を勤めます。この演目は私が所属している菊五郎劇団で大事にされていて、歌舞伎を観たことの無い方にも判りやすく、だれでも江戸にタイムスリップしたような気分になれる作品です。皆さんと力をあわせ、お客様に江戸の雰囲気を味わっていただきたいと思います。
若い世代の方、歌舞伎を観たことのない方にも楽しんでいただけるように、今できる力を存分に発揮して、お客様にエネルギーを与えることができたらと思っております。