Home > トピックス一覧 > 猿之助が意気込みを披露~新橋演舞場 スーパー歌舞伎II『ワンピース』

トピックス

猿之助が意気込みを披露~新橋演舞場 スーパー歌舞伎II『ワンピース』


 10月、11月新橋演舞場では、スーパー歌舞伎II(セカンド)『ワンピース』が上演されます。尾田栄一郎の「ONE PIECE」は、1997年7月「少年ジャンプ」に掲載され、瞬く間に国民的人気を博し、第78巻現在、累計発行部数は世界最高となる3億2000万部を突破しています。この秋話題の公演に先立ち、製作発表が行われ、ルフィ、ハンコック、シャンクスの3役に加え演出を手掛ける、市川猿之助と、脚本・演出の横内謙介が公演への思いを語りました。

【横内謙介(脚本・演出)】
 猿之助さんとこのような機会いただき嬉しく思います。先代の猿之助(市川猿翁)さんと90年代からスーパー歌舞伎などでお仕事をさせていただき、様々なことを教わってまいりました。まさか、二代にわたる猿之助さんにお仕えできるとは思ってもおりませんでしたので、今までのご恩返しも含めてがんばらなくてはいけないと思っています。
 先代がスーパー歌舞伎を創るときに、よくおっしゃっていたのが「3つのS」。わかりやすく現代的な“ストーリー”“スピード”そして“スペクタクル”。この3つを持ってスーパー歌舞伎と呼ぶ、そうなっていないと、台本を何度も書き直されました。今回は「ONE PIECE」というすばらしい“原作・ストーリー”、猿之助の遺伝子を継ぎ、さらに発展させようとしている四代目の猿之助さんの持つ“スペクタクル”、そして、澤瀉屋一門に、浅野さん、福士さんなど、現代的な“スピード感”あふれる俳優の皆さんが揃い、まさにスーパー歌舞伎にふさわしいものになると思っています。

 今回は原作の中から「頂上決戦」を選びました。一番大きな戦いでもあるので、初めて観る方にも分かりやすいですし、麦わらの一味の“勢揃い”や、白ひげの最期の死に方はまるで“弁慶の立ち往生”と、歌舞伎らしい場面もあります。
 打合せを進める中で、四代目がさらに先に進もうとしているのを、ひしひしと感じています。言葉遣い一つにしても、歌舞伎風にするのではなくルフィの言葉でいきたいと言いますし、演出方法も、三代目がしていないことをやりたい、と意図的に考えていらっしゃいます。スーパー歌舞伎をある程度分かっているつもりですが、さらにもう一つ新しい角度で入らなくてはいけないなというところを楽しみにしています。今は、猿之助さんの伸びる手足になりながら、まだ見ぬ秘宝を探しに旅に出るという気持ちでいます。


【市川猿之助】
 本日会見を行い、いよいよ後戻りのできない航海に出発したんだな、と実感しています。今回は「ONE PIECE」を全く知らない人にも楽しんでいただけるような作品にしようと思っています。「ONE PIECE」は長い物語ですから、どこをやるか非常に悩み、「頂上決戦」を上演することにしました。名場面だけを上演することが多い歌舞伎では、一場面だけを上演する形態があたりまえですから、「頂上決戦」だけをクローズアップして上演することができるのも歌舞伎ならではではの良さではないでしょうか。

 実はまだ原作は読んでいません。横内先生は勉強なさってワンピースの世界に精通されていますから、2人がワンピースに精通してしまうと、観客を置いてきぼりにしてしまうこともありえます。ですから、私は本当に素人的な質問「何でここはこうなるの?」という疑問を大切にしようと、あえて読まないようにしています。
 ルフィ、ハンコック、シャンクスの3役を勤めます。ルフィーは、海が苦手なんですよね。私も苦手ですから親近感が沸きます(笑)。ルフィーは頂上決戦ではあまり活躍しないんです。歌舞伎で言う『義経千本桜』の義経のように、主人公だけどあまり活躍しない。そこで早替りができて、女方という特性も生かせるように、ハンコック、シャンクスを勤めさせていただきます。若手の(坂東)巳之助君がゾロ、ボン・クレー、スクアード、(中村)隼人君がサンジ、イナズマと、彼らの活躍も楽しみです。

 「ONE PIECE」を歌舞伎で表現するには猿之助が良いのではないか、と選んでいただいた事に応えなくてはいけないと思っています。今回は新橋演舞場では初めての「斜めの宙乗り」で客席の上を飛びます。火の戦い、氷の戦い、そして本水を使ったり、ありとあらゆるスペクタクル、そして美しい光景をお見せします。創っている本人も、出演する皆も、お客様もどんなものになるか、今は全く想像がつきませんが、皆様と共に、どんな宝が待っているか、これから宝探しの冒険に出たいと思います。


尾田栄一郎からのメッセージも紹介されました。
 演劇と歌舞伎の境界線はどこにあるのかと尋ねると「全ての所作が美しいのが歌舞伎です」と猿之助さんは言われました。僕はONE PIECEを美しく描いたことはありません。つまりこれは、海賊と美しさのコラボレーション。歌舞伎というフィルターを通すと、海賊達がどんな美しさを放つのか、制作の片鱗を見せていただくに、すごいものになるという予感しかいたしません。言わずもがな、市川猿之助さんという才能に超ご期待ください!!