市川 猿之助 (4代目) イチカワ エンノスケ

屋号
澤瀉屋
定紋
八重澤瀉、三ッ猿
所属
伝統歌舞伎保存会会員

プロフィール

▼立役・女方。作品の成り立ちや役の性根を的確にとらえた知性と細やかな情感が融合し、時に圧倒的な吸引力で客席を沸かせる。その象徴が家の芸「猿翁十種」の『黒塚』だ。伯父・市川猿翁のスーパー歌舞伎をさらに発展させたスーパー歌舞伎Ⅱ第2作『ワンピース』では、演者としてのみならず演出家、プロデューサーとしての手腕も幅広い層から高く評価された。
澤瀉屋代々の工夫が凝縮された『四の切』の狐忠信は回を重ねるごとに精密度を増し、技術と心情と風情が溶け合って深化している。四代目襲名前後から「三代猿之助四十八撰」に独自の視点を取り入れて上演。その頃から立役を演じる機会が増えていったが、近年は『義経千本桜』渡海屋・大物浦の典侍(すけ)の局、『傾城反魂香』のおとく、『かさね』の腰元かさねなどで充実した舞台を見せている。『新版 オグリ』など、発展を続けるスーパー歌舞伎Ⅱの未来に期待がかかる。

〔清水まり〕

経歴

芸歴

▼1975年11月26日生まれ。市川段四郎の長男。80年7月歌舞伎座『義経千本桜』の安徳帝で初お目見得。83年7月歌舞伎座『御目見得太功記』の禿(かむろ)たよりで二代目市川亀治郎を名のり初舞台。98年7月歌舞伎座『義経千本桜』のお里で名題昇進。2012年6・7月新橋演舞場『義経千本桜』川連法眼館の忠信実は源九郎狐、『ヤマトタケル』のヤマトタケルなどで四代目市川猿之助を襲名。

受賞

▼1984年7月歌舞伎座『牡丹景清』の娘人丸で歌舞伎座優秀賞。85年7月歌舞伎座『加賀見山再岩藤(かがみやまごにちのいわふじ)』の又助弟志賀市などで歌舞伎座賞。90年7月歌舞伎座『連獅子』の狂言師左近実は仔獅子の精で松竹社長賞。2002年第二十三回松尾芸能賞新人賞。04年3月『加賀見山旧錦絵(かがみやまこきょうのにしきえ)』のお初で国立劇場優秀賞。05年重要無形文化財(総合認定)に認定され、伝統歌舞伎保存会会員となる。06年6月歌舞伎ロンドン公演『かさね』でローレンス・オリヴィエ賞「ベスト・ニュー・ダンス・プロダクション」部門にノミネート。同年第六回朝日舞台芸術賞寺山修司賞。同年度第二十三回浅草芸能大賞奨励賞。08年度芸術選奨文部科学大臣新人賞。13年第三十四回松尾芸能賞優秀賞。14年第三回水木十五堂賞。17年第二十四回読売演劇大賞優秀男優賞。

著書・参考資料

▼著者(梅原猛著)『梅原猛「神と仏」対論集』第三巻 神仏のまねき(2006年、角川書店)、著書『カメ流』(08年、角川学芸出版)、著書『祝!四代目市川猿之助襲名記念 僕は、亀治郎でした。』(12年、集英社)、著書『猿の眼 僕ノ愛スル器タチ』(16年、淡交社)

舞台写真