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「歌舞伎座新開場柿葺落 九月花形歌舞伎」出演者らが意気込みを語りました


写真:左から七之助、愛之助、菊之助、染五郎、松緑、海老蔵、勘九郎、夢枕獏

 花形が結集し古典と新作に挑む、話題満載の「 歌舞伎座新開場柿葺落 九月花形歌舞伎」。昼の部は、古典の大作『新薄雪物語』(しんうすゆきものがたり)と吉原仲之町が舞台の華やかな舞踊『吉原雀』(よしわらすずめ)を上演。夜の部は、小説家・夢枕獏氏による人気小説シリーズを、歌舞伎座新開場記念作品として上演する新作歌舞伎『陰陽師』(おんみょうじ)です。公演に先立ち、出演者らが意気込みを語りました。


【夢枕獏】(『陰陽師』原作者)
新しい歌舞伎座で最初に上演される新作歌舞伎が、私の『陰陽師』となり、大変光栄に思っております。また、俳優の方々の顔ぶれをご覧いただければ判るとおり、若手花形の方々が、ほとんど総出演されていらっしゃって、これもまた大変嬉しいことと感謝しております。
普段はひとりぼっちで部屋にこもり、こつこつ原稿を書くという、暗い作業をしておりますが、そうやって書いたものを原作として、舞台の上で生身の役者の方々が演じてくださる、書いた方としてはたまらないですね。多分観客の中で一番楽しい思いをするのは私ではないかと思っています。




市川染五郎
昼の部は『新薄雪物語』、これ以上大きな歌舞伎は無いというほどの傑作であり大作です。その大きさに負けないよう、体当たりで、記録と記憶に残るものを目指し勤めたいと思っています。夜の部は、歌舞伎座新開場の記念として創られた『陰陽師』、舞台・映画・テレビ、様々な分野で形になっていますが、私は歌舞伎で上演されるのがベストな形ではないかと思います。夢枕先生の書かれた小説以上の作品になることを目指して頑張ります。
陰陽師はとても妖しい世界です。国の中でも一番上の方にお告げができるというという存在でありながら、それが決して策略と感じられるような事があってはいけない。存在の無い存在感、陰陽師とはそういう立場ではないかと思います。まして安倍晴明というのは、出生を含め謎の多い人物とされています。存在感の無い存在感というものをどれだけ出せるか、何もしない中でも妖しい存在でたたずむことができるか、というものが大切になると思います。




尾上松緑
7月に続き、9月も我々の世代で歌舞伎座を開けさせていただける、また昼の部は古典、夜の部は新作と、二本の作品に二役で参加させていただけるのは、これからの役者人生にとりまして非常に有意義なことと思っています。また、これだけ花形役者が集まり一つの興行を打つというのは初めてに近いことです。行く行くは、今諸先輩たちがなさっているように『仮名手本忠臣蔵』や『義経千本桜』、『菅原伝授手習鑑』などの通しでの上演を、我々にも任せていただけるように、この公演で結果を出さなければいけないと思っています。
『新薄雪物語』では合腹(あいばら)といって、私が勤める幸崎伊賀守と染五郎さんの園部兵衛が、お互いの子どもの為に切腹をする印象深い場面があります。それもただ切腹するだけではなく、互いが相手の意志を思い、見えないところですでに切腹したことを隠しながらそれぞれが舞台に現れます。切腹をするというところまで追い詰められた人間の極限の精神状態、そして幸崎と園部の信頼関係、それと同じように、子どもの頃から培ってきた染五郎さんと私の信頼関係、そういうものがシンクロして舞台の上に出せればいいなと思っています。




尾上菊之助
1700年に初演された『新薄雪物語』と、2013年に初演される『陰陽師』、二本の作品をお目に掛けます。いつの時代にも歌舞伎は新作が必要とされて、その都度新しい風が歌舞伎には吹いて参りました。しかしいつも問われるのは、何を持って歌舞伎かということです。それは、江戸時代に花開いた文化の歌舞伎、成熟した歌舞伎の身体・意識・呼吸を役者が体現することで歌舞伎になる、そう信じています。昼の部の古典、夜の部の新作と、ぜひ二つの作品を楽しんでいただきたいと思っております。
こうして同世代の方々とお芝居するのは、いつも楽しみです。柿葺落が開いて、先輩方が四月から六月の3ケ月の間、身体で示してくださってきた歌舞伎を、皆で力をあわせて守っていきたいと思っています。




市川海老蔵
『新薄雪物語』では秋月大膳と葛城民部を勤めさせていただきます。夜の部では『陰陽師』で平将門という大変我が家とも所縁のあるお役を頂戴しました。古典を守り、新作に挑戦し新しい物が見つかるように、皆で力を合わせ精進できたら、本当に素敵な時がくると思います。そして、これを皮切りに、毎年一回こうして皆で顔をあわせて興行を打ち、歌舞伎の未来を創っていけたらいいなと思っています。
平将門は、今も、この時代もかなり有名な人物で、いまだに様々な伝説が残っています。父(十二代目市川團十郎)も自主公演で、将門を勤めたことがあり、その時は、首が無くなってでも歩いていくというような演出もしておりました。肉体は滅んでも、いまだに生き続けている、そうしたものを、歌舞伎ならではの世界で表現できるように勉強していこうと思います。




片岡愛之助
昼の部『新薄雪物語』では奴妻平、夜の部『陰陽師』では興世王を勤めさせていただいます。このメンバーで勤めさせて頂くのも楽しみですし、『陰陽師』では齋藤雅文さんによる演出も楽しみ、そして作品を創り上げていくお稽古場も今から楽しみです。
歌舞伎は伝統芸能ですから、先輩から受け継いだものを後輩に渡していくということも大切な役目ですし、古典を守るというのも当たりまえのことです。そして、それに加えて新作を創るというのも必要なことだと思います。創るからには『陰陽師』という作品が2度、3度と上演されるように、そして50年後、100年後の俳優の方々にも演じてみたいと思われるような作品にしたいと思います。




中村勘九郎
昼の部『新薄雪物語』では、染五郎さんの息子園部左衛門を勤めますが・・・大丈夫でしょうか(笑)。若々しく勤めたいと思っています。夜の部は新作『陰陽師』をこのメンバーでできることを幸せに思っております。歌舞伎座の新開場で初となる新作の上演ということで責任も重大ですが、以前の歌舞伎座で最初に新作として上演された『源氏物語』を超えられるような作品になるように、皆で創り上げたいと思っております。
昼の古典を観て「彼らはどのように新作を創っているんだろう?」、また夜の新作をみて「昼の古典はどんなものなんだろう?」と興味を示して頂くのも歌舞伎観劇の面白さの一つだと思います。そして、現代を生きる夢枕先生と一緒に新作を創ることができるというのも歌舞伎役者として幸せを感じる瞬間です。




中村七之助
今から『陰陽師』という新作を創り上げる稽古をとても楽しみにしています。そしてお客様にも楽しんで帰っていただけるような作品にしたいと思っています。今までにも新作に携わり作品を産み出すことの苦しさを学んできました。それによって、これほど素敵な古典を私たちに残してくれたんだと、先人達への尊敬の念も強くなり、古典を大切にしなくてはいけないなという気持ちもさらに強くなりました。今回は昼に古典、夜に新作をそれぞれ上演させていただきますが、古典・新作ともに大事にしていきたいと思っています。
私はここにいる中では一番若いのですが、この"一番若い"というのは、すごく居心地がよくて・・・最近は若い人がどんどん出てきて「あっ、ちょっと歳とったのかな?」と思うこともありますが、この中では"一番若い"ので、存分に先輩方に甘え、意見を言って、生意気だなと思われながら、一緒に舞台を創っていきたいと思います。