扇雀、菊之助が意気込みを披露~国立劇場3月歌舞伎公演

2019.02.16 発表・会見

 国立劇場の 3月歌舞伎公演は『元禄忠臣蔵 (げんろくちゅうしんぐら) 御浜御殿綱豊卿 (おはまごてんつなとよきょう)』と『積恋雪関扉 (つもるこいゆきのせきのと)』の上演です。「歌舞伎と桜」というテーマのもと、12年ぶりに小劇場で行われる歌舞伎公演に期待が高まります。
 公演に先立ち取材会が行われ、中村扇雀尾上菊之助が意気込みを語りました。

【中村扇雀】
 『曾根崎心中』のお初をはじめてやらせていただいたのも国立劇場小劇場で、その時は父(坂田藤十郎)にいろいろと教わりましたが、そういう数々の場を作ってくださった小劇場で、今回、徳川綱豊卿を初役で勤めさせていただくことになりました。
 綱豊は近年でいうと、松嶋屋(片岡仁左衛門)のお兄さん、高砂屋(中村梅玉)のお兄さんが多く勤めてらして、役のイメージがついているような気がして、私がお受けするというのは非常に勇気のいることでした。
 思いを巡らす中で、家の芸として、これからも勤めていきたい『土屋主税』も忠臣蔵のお話ですし、演目は違ってもこういう形で忠臣蔵に関わるのもよいのではないか、自分なりの綱豊を創ろうと決心いたしました。

 綱豊は、心の中で内蔵助と自分を重ねていて、内蔵助の代弁者としての苦悩をお客様に伝える事がとても大切です。浪士たちは討ち入りという一方向に向かっている、そこに浅野家再興という話があがり、苦悩している内蔵助の立場と、将軍の後継争いに巻き込まれないようにしている自身の境遇が重なるからこそ、身分の差がありながらも助右衛門を諭す口調も強いものになります。綱豊のセリフを通して、内蔵助の苦悩がきっちりと浮き彫りになればと思っています。

 息子の虎之介が女方のお喜世を勉強させていただけるのも、小劇場ならではの楽しみといえます。また、助右衛門には非常に勤勉で口跡も素晴らしい歌昇さんが勤めてくださいます。お父上の又五郎さんが勘解由に出てくださって、芝居に厚みがでると思うので、とても感謝しております。
 最近の若い皆さんの中には、忠臣蔵を知らない方も多くいらっしゃるようです。そういった方にも伝わるように勤めたいと思います。

【尾上菊之助】
 『積恋雪関扉』に初めて出演して以来、素晴らしい作品という思いが強くなり、いつかは関兵衛を勤めてみたいと心に秘めておりました。今回は挑戦する小劇場、そしてテーマが「歌舞伎と桜」ということもあって、桜の精と関兵衛が織りなすファンタジーの世界があっているのではないかと、思い切って挑戦させてくだくことにしました。江戸の文化が花開いた天明という時代に生まれた歌舞伎舞踊の大作の一つです。関兵衛の軽妙洒脱なところ、後に黒主になってからの大きさや風格がどれだけ出せるのかというのは、非常に大きな壁ですが、全力でぶつかっていきたいと思っています。

 墨染を勤めながら、前半の関兵衛の問答のところなど、よくあそこまで洒脱な振りが付いたなと思いながら拝見していましたし、後半は黒主がぶっかえってから、今までのことが一切破壊されてしまうような、世界が全く変わるような感じを受けていました。こちらも桜の精として、人知を超えた力を出していかないと場が成立しないような気がしていましたが、黒主ですとさらにそういった力というものが必要になってくるのではないでしょうか。“『勧進帳』の弁慶より大変だよ”という方もいらっしゃいますが、洒脱で格がないとできない黒主を、今回自分の体でどのように表現できるのか挑戦してみたいと思っています。

 この常磐津の曲も好きですし、いまから230年以上前に初代中村仲蔵によって初演されて以来、ほぼその形が残って現在に至っているというのは、やはり、歌詞・曲・振りが面白いが故で、そこに引き付けられる魅力があります。
 客席と舞台の近い小劇場の中で私を含め、梅枝さん、萬太郎さん、初役の皆がぶつかりあって、先人たちが築き上げた名作の舞台に、どれだけ肉薄できるか、魂を込めて勤めますのでご期待ください。