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市川春猿が劇団新派に入団、春猿改め河合雪之丞に!
平成29年1月三越劇場 初春新派公演「華岡青洲の妻」において、市川春猿が劇団新派に入団し、河合雪之丞を名のることが決定しました。
“雪之丞”は春猿の師市川猿翁からの薦めにより、また“河合”は明治から昭和にかけて活躍した新派の名優・河合武雄から名付けられました。河合は伊井蓉峰、初代喜多村緑郎とともに新派の黄金時代を築き上げ、伊井亡き後は喜多村と共に新派を支えた名女方です。奇しくも、本年9月に襲名した二代目喜多村緑郎とともに、新派の黄金時代を思わせる新たな名跡が誕生することになります。
【水谷八重子】
春猿さんを拝見していると、“女優ではやりにくいようなお役はどうだろう?新しい芝居創りができないだろうか?”など、私の中で何か別の血が騒ぐような気がしております。一緒にやっていけたら色々な夢を見させていただけるのではないか、そんなふうに楽しみにしております。
女方さんを迎えたという感じではなく、同じ女優、同じ仲間という感じがとても強いんです。『残菊物語』では恋人役をやってくださいまして、本当に熱愛いたしました。女方さんが立役をなさると、とても色気があります。そんな不思議なセクシーな魅力、女を引き付ける魅力をお持ちですから、これからも立役もいっぱいやっていただきたい。また、私には絶対できないであろう役を見たいと思いますし、そういう芝居を創りたい、そんな欲が出てくる雰囲気を醸し出していらっしゃいます。
昔の新派の歴史を紐解きますと、歌舞伎との合同公演も多く、これを機に歌舞伎と合同公演が持てるような新派にしていきたいと思っています。そして、いろいろなところと合同して、幅を広げて、どんどんいろいろなものを取り込んでいく欲張りな新派でいつまでもいたいと思っております。
【波乃久里子】
今、新派には希望が出てきたような気がします。市川月乃助さんが喜多村緑郎さんにおなりになって、尾上松也さんの妹・春本由香さんが入って来てくださり、そして今度は春猿さんが入ってきてくださる、本当に嬉しゅうございます。
14年前に春猿さんの『明治一代女』を拝見した時、この方は歌舞伎より新派の方が合うのではないか、でももし一緒になってライバルになったら嫌だな・・・と思ったことを良く覚えています。
入団にあたり、春猿さんに新派の芝居を教えるなんて、私にはとても無理と思っていたのですが、今日お会いした時に本当に初々しい、可愛らしい春猿さんが立っていらして、「新派では私は新一年生で、入学でございます」とおっしゃったのを聞き、「この方なら、水谷先生や先輩方に教わったことをご伝授できる」と思いました。新派にとりましても素晴らしい柱になっていただきたいと思います。
春猿さんは、初代水谷八重子先生が女方の中に入って来た時の苦しさと逆の苦しみを持つと思います。八重子先生が本当に大変だったように、女優さんの中に女方さんが入るということは大変なことだと思います。私の役を取られないように・・・できたら男の役をいっぱいやっていただければ・・・それも嬉しゅうございます(笑)。
【市川春猿】
市川猿翁の元で歌舞伎を29年間勉強させていただきました。その中で、師匠はもちろん、先輩、同輩、後輩、スタッフの皆様など周りの方々に支えられて参りました。今回の新派入団にあたりまして、今までの皆様に対する感謝の気持ち、そして自分に対する厳しい気持ちを新たにして、頑張りたいと思っています。
新派に興味を持ちましたのは、歌舞伎に興味を持ったのと同時期といっていいと思います。いろいろな新派の作品も大好きで拝見しておりました。自分の勉強会で新派の『明治一代女』をやらせていただいたこともございます。その時相談した師匠から「ぜひやりなさい、あなたは新派に向いている」と言われ、細かく指導していただいて本当に勉強になりました。
その後『滝の白糸』をやらせていただいた頃から、毎年のように新派の作品に出演させていただきまして、新派の魅力というものに、さらにのめり込んでいきました。その中で、新派の女方芸というものも勉強して後世に伝えていけなければならない、そして私が新派に入団することで、微力ながら新派というものがより多くの方達の目に触れていただける一端を担えれば、という気持ちで、退路を断って新派に入団させていただくことになりました。
入団の意思を伝えた時に、師匠は「大賛成だ」と言ってくださいました。その時の言葉が本当に嬉しかったのを覚えております。そして(四代目)猿之助さんからも「よく頑張って」とお言葉をいただきました。屋号は、これも猿翁の薦めで、雪にちなんで、また猿翁が兎年ですので“兎”を使って「白兎屋(しらとや)」とさせていただきました。
10月26日の仙台での公演が歌舞伎の舞台の最後ということになりました。気持ちはスッキリとしております。それは一門の方達、ご一緒した役者さんたち、衣裳さん、床山さんをはじめスタッフさん、いろいろな方達が気持ちよく送り出してくださったから、また八重子さん、久里子さん、そして新派の諸先輩達、劇団の皆様も本当に暖かく快く迎え入れて下さっているからだと思います。
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