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梅玉、魁春、鴈治郎が成功祈願~国立劇場10月歌舞伎公演『通し狂言 伊勢音頭恋寝刃』


 国立劇場の10月歌舞伎公演は『 通し狂言 伊勢音頭恋寝刃』。序幕「相の山」より大詰「奥庭」まで、さらに53年ぶりに「太々講」が上演される話題の舞台です。
 公演に先立ち中村梅玉中村魁春、中村鴈治郎が“東京のお伊勢さま”として親しまれている東京大神宮で成功祈願を行い、思いを語りました。

【中村梅玉】
 『伊勢音頭恋寝刃』の福岡貢を勤めさせていただくことになりました。伊勢音頭自体とてもポピュラーな作品ですので、今まで国立劇場で上演されていなかったという話をうかがい、びっくりいたしました。国立劇場における初めての上演に、私が貢をさせていただくのは大変ありがたいことで、研究して公演を成功に導きたいと思います。
 貢は私にとりましてとても思い入れのあるお役で、梅玉を襲名した平成4年にも勤めさせていただきました。今回はさらに普段上演されない場面にも登場いたしますので、貢の役の性根を大事にして勤めたいと思っております。

 この作品の一番の主役は、名刀“青江下坂(あおえしもさか)”です。この刀をめぐって様々な事件がおこってまいります。伊勢神宮の御師(おんし)であることを意識して、貢がこの事件に巻き込まれてしまうという形で役作りをしたいと思っています。そして、伊勢神宮を中心とする、あの周りのロケーション、そういった雰囲気が舞台に出るのも大切だと思っています。


【中村魁春】
 今日の成功祈願は雨。きっと雨男の梅玉さんがいるからでしょう(笑)。
 仲居の万野(まんの)を勤めさせていただきます。私はお姫様などが多くて、およそ万野をやるとは夢にも思っておりませんでしたが、いかに意地悪くやるか研究中でございます。
 貢はお紺が好きで、万野は結局嫉妬しているのではないかと思います。“万野は貢に惚れている”それを極端にお見せはしませんが、そういう気持ちでさせていただこうと思います。

 父(六代目歌右衛門)も晩年はよく万野を勤めておりましたが、これからゆっくり、父や、ご一緒に出させていただいた芝翫兄さんの、良いところをとって、その通りできるわけはありませんが、自分の万野をさせていただきたいと思っています。


【中村鴈治郎】
 正直正太夫と料理人喜助の二役を勤めさせていただきます。祖父の二代目鴈治郎が「太々講」で正太夫を勤めており、それが良かったという話ばかりが耳に入ってきて、今は大変なプレッシャーでございます。
 上演年表を調べても、「太々講」は通し狂言の中の一つとして出るばかりではなく、一幕のみで上演されることも多く、それだけよっぽど面白かったのだと思います。正太夫はいい加減な男で、自分の好きな女や家、全てを手に入れようということしか考えていません。それが懲らしめられて、めでたしめでたしとなる、喜劇の要素のある場面です。能の“間狂言”のようにできればと思います。

 料理人の喜助は、すっと小股の切れ上がった男、というイメージです。とにかく“かっこいい”喜助をできるのは大変嬉しく、二役あわせて良い芝居をさせていただきたいと思っております。