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幸四郎、染五郎が池上本門寺を墓参~歌舞伎座11月「吉例顔見世大歌舞伎」


 歌舞伎座11月公演「 吉例顔見世大歌舞伎」は、初世松本白鸚三十三回忌の追善興行として上演されます。公演に先立ち松本幸四郎市川染五郎初世松本白鸚の眠る東京・池上本門寺で墓参を行い、公演への思いを語りました。

【松本幸四郎】
 本日、無事に墓参を済ませることができ、父(初世松本白鸚)も喜んでいることと思います。この度、11月歌舞伎座で、三十三回忌の追善興行をさせていただきますが、役者としても、人間としても精一杯立派に生きていた父を偲ぶ会が、縁のある演目で出来ますこと、大変喜んでおります。
 その追善興行で、染五郎が初役で『勧進帳』の弁慶を勤めます。本当に良いタイミングだと思います。若いうちから、いろいろな大役をするのも勉強ですが、様々な役を勉強して、そしてこの弁慶という大役に挑むというのも一つの歌舞伎役者の生き方ではないでしょうか。染五郎にとって弁慶を演じることは夢だったと思いますが、今は私も夢が叶った思いです。33歳で幸四郎を襲名してから今日まで、自分はこの日の為に歌舞伎を一生懸命やってきたのではないか、染五郎が歌舞伎座で『勧進帳』の弁慶をさせていただく、この日が来るのを夢見て、今まで自分は九代目幸四郎として頑張ってきたのではないかと思えるほどです。
 私・染五郎・金太郎という三代で『勧進帳』が出来るのも奇跡的なことだと思います。これもやはり父の人徳のおかげではないでしょうか。太刀持の金太郎が、舞台の上で弁慶や富樫を見ることで、歌舞伎というのはこういうものかと段々身体でわかってきます。とにかく今は見せる、祖父である私、父である染五郎の歌舞伎を見せる。それを見た金太郎が心に何を感じ、どう役を勤めるのか、というのも一つの楽しみであり、歌舞伎の伝承の一つではないかと思います。


池上本門寺での墓参の様子

【市川染五郎】
 祖父の三十三回忌の追善興行がこうして出来るのも、高麗屋をここまで大きくした父の存在の大きさとともに、今も記憶として残る祖父の芸の大きさがあるからではないでしょうか。そして、その追善興行で『勧進帳』の弁慶を初役で勤めさせていただきます。とても大きなハードルではありますが、初役という域ではないもので初日が開けられるように毎日稽古をしております。
 一歳になるかならないかの頃、小さな体に合わせた弁慶の小道具を身に付けて六方を踏んでいる自分の写真が残っています。その頃から41年間、あこがれ続けたものが実現するという思いでいます。
 そして、父の富樫、おじの義経、2人のいる興行で弁慶を勤めることは、本当に意味のあること、これ以上の幸せはないと感じています。太刀持は息子の金太郎が勤めます。父の弁慶でも太刀持を勤めていますが、その時とどれだけ違うか、舞台で出してほしいと願っています。