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染五郎が意気込みを語りました~明治座 五月花形歌舞伎


 平成26年5月明治座では「 明治座 五月花形歌舞伎」が上演されます。
 昼の部は、歌舞伎義太夫狂言の三大名作のひとつ『義経千本桜』より、華やかな一幕「鳥居前」、ユーモア溢れる舞踊劇『釣女』、人生の栄枯盛衰をほのぼのと描いた洒落っ気たっぷりの一幕『邯鄲枕物語(かんたんまくらものがたり)―艪清の夢(ろせいのゆめ)』を上演。夜の部は、市川染五郎が三代猿之助四十八撰の内『伊達の十役』の十役を初役にて勤めます。
 公演に先立ち制作発表が行われ、染五郎が意気込みを披露しました。

 昼の部では『艪清の夢』を上演します。九世澤村宗十郎のおじ様の舞台を拝見しましたが、とても楽しく、面白く、笑えて、こういうお芝居ができないかなとずっと思っていました。その時の衣裳が残っているので、それを着て勤めるつもりです。宗十郎のおじ様のような、古風な女方さん、あの存在感は只々思い出すばかりの時代になってしまいましたが、そうした古風でおおらかな歌舞伎を目標にしたいと思っています。
 宗十郎のおじ様からは、いろいろなお役を教えていただきました。これは自慢になりますけれど、おじ様が唯一お芝居を休演された時に替わったのは私でした。おじ様には「君のお芝居はお客が(客席の)背もたれから離れていくようになるけれど、それは違うよ。歌舞伎は背もたれにゆったりと座って観るものだよ」と教えていただいたことがありました。そうした考えが歌舞伎の大らかさ、古風さというものに繋がっているのではないでしょうか。

 夜の部は『伊達の十役』です。この作品は、澤瀉屋のおじ様(市川猿翁)によって創られた新作歌舞伎ともいえるような作品で、その中でも最高傑作の一つです。おじ様からは何度も「この作品をやりなさい」とおっしゃっていただいて参りました。おじ様がこの作品を創られたときの情熱とエネルギーを持ち、この傑作を再現・体現したいと思っています。初演が明治座と所縁もあり、若い一座ですので一日一日全力を出し切る、そんな一月になることを目指して頑張りたいと思っています。
 『伊達の十役』は政岡のお芝居であって、決して「十役早替り」この一言で済んでしまうものではありません。話としてもわかりやすいしお芝居としても面白い、さらに十役早替りという趣向も入っていながら、本当に本(戯曲)が面白い。そういう意味でも政岡が出来るか出来ないかということが、このお芝居を勤めるための条件ではないでしょうか。それを目標に今まで女方を積極的に経験してきたといっても過言ではなく、こうして実現することになり本当に感無量です。

 『鳥居前』では古典の重厚さ、力強さ、色彩美を、『釣女』では踊りや音の楽しさというものを感じていただけます。『艪清の夢』では、話の楽しさファンタジーさというものを感じていただきたい。『伊達の十役』では、ストーリー、仕掛け、色彩・お化粧、どれも見どころですが、さらに宙乗りや早替り、十人を一人で演じるというのも歌舞伎ならではの楽しさ。さらにすべてが初役ですので、その歴史の1ページを皆さんと分かち合いたいと思いっています。
 明治座は館内も楽しいところが多いので、劇場に来るという楽しさもあります。お芝居を見る、ストーリーを追うというのだけが芝居見物ではありません。歌舞伎見物というのは来るところから。「歌舞伎に行くから、着物でも着ていっちゃおうかな」というところから積極的に楽しんでいただくと、さらに面白いなと思っていただけるのではないでしょうか。それを何倍にもしてお返しするものを用意していますので、ぜひお楽しみに。