トピックス

　「三月花形歌舞伎」にかくも賑々しくご来場を賜りまして、篤く御礼を申し上げます。当公演はシェイクスピアの『オセロー』を上演する予定でございましたが、オセロー役の父・團十郎が体調を崩しまして、4月からの歌舞伎座こけら落としに備え、休演をする運びとなりました。
　そして「三月花形歌舞伎」に差し替わった訳でございますが、このお話を頂戴した際に、公私ともにお世話になりました十八代目中村勘三郎のお兄さまの追悼の思いを込めまして、お兄さまから教えて頂きました『夏祭浪花鑑』『高坏』を上演し、せめてものご恩返しができればと思った次第でございます。
　勘三郎のお兄さまには大変お世話になりました。お兄さまが『高坏』を勤められたとき、私は高足売を勤めさせていただきました。お芝居が終わりますと、朝までお付き合いさせていただくことが度々ありました。『夏祭浪花鑑』はアリゾナでお稽古をつけて頂き、一日中お付き合いをさせていただき、全く眠ることができませんでした。お兄さまといると、一睡もできないというのが懐かしい思い出でございます。

◇

　本来でございますと、この舞台に立つはずでございました父・團十郎も2月3日にこの世を旅立ちました。この場をお借りいたしまして生前の父へのご贔屓、ご後援に心から篤く御礼を申し上げる次第にございます。
　パリのオペラ座で『勧進帳』を勤める際も、『口上』をするのは父の発案でございまして、フランス語で勤めたいということをおっしゃいました。また父は星を眺めるのが好きで、大きな望遠鏡を持って公園に行った思い出もございます。
　偉大な父、勘三郎のお兄さまを失いまして、せめて教えて頂いたことを受け継ぎ、さらには魂、思いを受け継ぎまして精進努力し、少しでも父、お兄さまに近づけるよう致しますれば、いずれも様におかれましては、歌舞伎をご愛顧くださいますようお願い申しあげ奉ります。