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「ル テアトル銀座 三月花形歌舞伎」海老蔵が公演への思いを語りました


3月3日~24日にル テアトル銀座で上演される「 ル テアトル銀座 三月花形歌舞伎」。
夏の大坂を男たちが駆け抜ける熱気みなぎるドラマ『夏祭浪花鑑』、ほろよい機嫌のステップをタップリ魅せる『高坏』、さらに『口上』を加えた楽しみな狂言立てが話題です。
公演に先立ち市川海老蔵が製作発表で公演への思いを語りました。

本来ですと、3月は父・團十郎が昔から勤めたいと思っていた『オセロー』をル テアトル銀座で上演させていただく予定でおりましたが、父が体調不良ということで延期になり、歌舞伎の公演をする運びとなりました。その頃は、まだ父も存命でしたので、昨年12月に亡くなった勘三郎のお兄さんに教えていただいたものをぜひ勤めさせていただきたいと『夏祭浪花鑑』『口上』『高坏』という3演目に決めさせていただきました。

初役に際し、『夏祭浪花鑑』を勘三郎のお兄さんに教えていただきたいとお願いしたところ、「僕はその頃日本にいないから、アリゾナに来たら教えてあげるよ」と仰っられたので、別荘のあるアリゾナにお伺いした事があります。勘三郎のお兄さんらしく非常に熱心に教えて下さいましたが、その光景が今も目をつむれば思い出されて参ります。少しでも教えていただいた事に忠実に、教えて下さった様々な事をもう一度見直して取りかかろうと思っています。


子供の頃から父の背中を見て育ちました。特に父の背中で思い出深いのは、私が初めて『連獅子』の仔獅子を勤めさせていただいた時の事です。幕の中から親獅子の父が出て、その後私が出て行くのですが、その時に見た父の背中はなんとも言えない、忘れられない背中でした。

比較的父は言葉数の少ない方でした。言葉で言うよりも感じる事から、本当の物が見えてくるのではないのか、という事も話しておりました。「こうしなさい、ああしなさい」と怒られるよりも、父の背中を見て感じたことや、何も言われずにただ見守られているということのほうが、怖かった事もありました。そうした積み重ねや、言葉にはせず父が語りかけていたことを、今は私なりに理解しています。

今回は『口上』もございます。初めは皆で並んでというお話もありましたけれど、こういうことになりましたので、一人で勤めてはどうかという事になりました。少しでも父の思い出を、お客様にも父を思い出していただけるようなお話ができればなと思っております。