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仁左衛門が語る『絵本合法衢』~国立劇場開場45周年記念4月歌舞伎公演


 国立劇場開場45周年記念公演「歌舞伎を彩る作者たち」シリーズの掉尾を飾るのは、四世鶴屋南北の傑作のひとつ『 絵本合法衢(えほんがっぽうがつじ)』。昨年3月の上演時には、東日本大震災のためわずか8回の上演で公演中止となりました。その後、国立劇場等に寄せられた再演を望む多くの声にお応えして、約1年後の再現が実現!
 今回も片岡仁左衛門が大学之助・太平次の2役を勤めるほか、豪華顔ぶれによる好配役を得て、魅力たっぷりの南北の世界が舞台で繰り広げられます。
 また東日本大震災復興支援、国立劇場チャリティー歌舞伎公演が4月25日(水)宮城県名取市文化会館で、翌26日(木)には宮城県多賀城市民会館で行われます。
 大ホールでは市民のみんさんをご招待して片岡仁左衛門、市川左團次らによる『天下太平 国土安隠 寿式三番叟』『新古演劇十種の内 身替座禅』、小ホールでは小・中学生を対象に片岡孝太郎による「たのしい歌舞伎入門」が開催されます。
 4月公演に先立ち、片岡仁左衛門が舞台への思いを語りました。


 

片岡仁左衛門
 45年前、国立劇場開場の公演に出演させていただきまして、ご承知の方もいらっしゃると思いますが、その第一声は私でございました(笑)。今回は国立劇場45周年、その記念公演に出演させていただき、本当に嬉しく思います。昨年の3月『絵本合法衢』を上演させていただき「次こうしよう、ああしよう」と工夫をしているときに東日本大震災があり、大変残念な思いで公演を中止しなければなりませんでした。もちろん、それは仕方のない事と諦めましたが、やはり役者として非常に残念でもありました。それが今回の再演、またお客様のご希望も多かったということで大変ありがたく、こんなに嬉しいことはございません。

 昨年演じてみて感じましたが、あれだけ悪い事が出来たら面白いですよね(笑)。それから歌舞伎の力、凄さを改めて再認識しました。あれだけの悪い事、残虐な事を繰り返していながら、お客様に楽しんでいただける、これが他のやり方ですと、ちょっと眼を背けたくなるような内容もあるのですが、それが歌舞伎だとかえって引き付けられる・・・今回の上演では、さらにテンポアップを心掛け、あまり説明過多にならないようにしたいと思っています。


写真左:左枝大学之助 写真右:立場の太平次


 鶴屋南北の魅力は、なんといっても人間臭さではないでしょうか。もちろん人間臭さが描かれているお芝居、作者さんは他にも大勢いらっしゃいますし、それぞれに素敵な作品がありますが、南北の作品は何と言うか、胸をグサッと刺されるような感じ・・・他の作家の方々の作品は、年月とともに格好の良い場面だけが今に残る、そういう事も多いようですが、南北の作品は、格好が悪い、というか飾り気のない、グサッとくるものが多く残っているように思います。昔のお芝居では悪人が主役とうい時代が長くあって、立役で名優といわれる方々が敵役を数多く勤められていらっしゃいました。そういうところで南北は強さを発揮していたのではないかと思います。

 今回、4月25日、26日に宮城県でチャリティー公演を行わせていただきます。常日頃、何かお役に立ちたいと思っており、こういう場を与えてくださった事に本当に感謝しております。大きな震災の後で、浮かれていてはいけませんが、あまりにも自粛、自粛としていますとやはり日本全体がダメになると思います。こちらが元気をつけて、そして被災地の方達に元気をお分けするようになればと思っておりますし、この公演で、辛い毎日を送っていらっしゃる皆さん方の癒しのお役に少しでもたてればと思っています。

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