片岡 仁左衛門 (15代目) カタオカ ニザエモン

屋号
松嶋屋
定紋
七ツ割丸に二引
所属
伝統歌舞伎保存会会員

プロフィール

▼現代を代表する立役で風姿、口跡、演技力の三拍子を備えた俳優である。京都生まれで上方狂言が得意なのは当然として、江戸狂言の『助六』『勧進帳』や南北劇でも優れた演技を見せている。立役、捌き役では持ち前の爽やかな芸風が映えるし、敵役では凄みと悪の色気が漂う。本領の上方和事の役では男ぶりの良さと、柔らかみで観客を魅了する。仁左衛門家は代々江戸、大坂(大阪)、京都の三都市で活躍するのを家風にしてきたが、その伝統を継承している。どんな役でも研究を怠らず、やる度に工夫を加えて舞台に臨む。近年は古典の大役を次々と演じ『寺子屋』の松王丸、『盛綱陣屋』、『熊谷陣屋』、『実盛物語』、『義経千本桜』の権太・知盛などを次々に演じて優れた演技をみせた。一方『吉田屋』の伊左衛門、『恋飛脚大和往来』の忠兵衛・孫右衛門、『伊勢音頭』の貢などの上方狂言、『元禄忠臣蔵』の徳川綱豊をはじめとする新歌舞伎にも多くの当たり役を持っている。

〔水落 潔〕

経歴

芸歴

▼1944年3月14日生まれ。十三代目片岡仁左衛門の三男。49年9月大阪・中座『夏祭浪花鑑』の市松で本名の片岡孝夫で初舞台。父の旗揚げした〈仁左衛門歌舞伎〉で演じた『女殺油地獄』の与兵衛が出世芸となる。93年に1年間病気休演したが大病を克服し、94年1月に舞台復帰。98年1・2月歌舞伎座『吉田屋』の伊左衛門、『助六曲輪初花桜(すけろくくるわのはつざくら)』の助六ほかで十五代目片岡仁左衛門を襲名。

受賞

▼1964年三洋新人文化賞。64年と67年に大阪府民劇場奨励賞。69年度芸術選奨文部大臣新人賞。72年重要無形文化財(総合認定)に認定され、伝統歌舞伎保存会会員となる。80年7月『女殺油地獄』の与兵衛で国立劇場優秀賞。81年10月御園座『元禄忠臣蔵』御浜御殿の綱豊卿に対して名古屋演劇ペンクラブ年間賞。82年6月第一回眞山青果賞大賞。85年度第四回都民文化栄誉章。86年度芸術祭賞。87年度日本芸術院賞。95年3月歌舞伎座『菅原伝授手習鑑』の菅丞相で松竹会長賞。同年4月第十四回眞山青果賞大賞。96年第三回読売演劇大賞優秀男優賞。同年第十七回松尾芸能賞大賞。同年度十三夜会年間大賞。99年第四十回毎日芸術賞。同年大阪舞台芸術賞。2001年第二十回眞山青果賞大賞。同年第十九回京都府文化賞功労賞。02年第二回朝日舞台芸術賞。05年第十二回読売演劇大賞優秀男優賞。06年紫綬褒章。同年日本芸術院会員。07年度大阪芸術賞。10年第十三回坪内逍遙大賞。11年第十七回読売演劇大賞選考委員特別賞。同年十三夜会賞年間大賞。15年重要無形文化財保持者(人間国宝)。15年度第三十四回京都府文化賞特別功労賞。16年第二十三回読売演劇大賞・同最優秀男優賞。18年文化功労者。

著書・参考資料

▼著書『とにかく芝居がすき』(1981年、大和書房)、著書『あなたと京都へ 片岡孝夫のとっておき古都案内』(84年、PHP研究所)、写真集『十五代目片岡仁左衛門 片岡孝夫の軌跡』(98年、淡交社)、写真集『十五代目襲名記念 写真集 片岡仁左衛門』(98年、淡交社)、写真集(篠山紀信撮影)『十五代目 片岡仁左衛門』(2009年、小学館)

舞台写真