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「松竹大歌舞伎 近松座訪露公演」記者会見が行われました

 外務省の認定事業「ロシアにおける日本年」のメイン企画の一つとして、また「国際チェーホフ演劇祭」の招聘プログラムとして、本年9月に「 松竹大歌舞伎 近松座訪露公演」がロシアのモスクワ、サンクトペテルブルクの2都市で行われます。5月21日(月)に都内のロシア大使館にて記者発表が行われ、関係者及び出演の中村鴈治郎中村扇雀が公演へ向けての思いを語りました。

【宮川学】(外務省国際文化交流審議官)
 「あなたの知らない日本があります。あなたの知らないロシアがあります。」これは、2016年の12月にプーチン大統領が訪日された際、日露の首脳が合意した「ロシアにおける日本年」そして「日本におけるロシア年」の標語です。この度、「松竹大歌舞伎 近松座」のモスクワ及びサンクトペテルブルクでの公演の開催に心よりお祝い申し上げます。

 今回の公演は「ロシアにおける日本年」の目玉行事でございます。歌舞伎は演劇大国であるロシアでこれまで4回上演されておりますが、その度に大変な好評を博しており、ロシアの皆様のご期待はとても高いと聞いております。

 本年が日本とロシアの長い歴史の中で、両国の国民の相互理解が一層深まるような新たなページとなることをお祈り申し上げます。


【ミハイル・ユリエビッチ・ガルージン】(駐日ロシア大使)
 日露交流年におきまして、「松竹大歌舞伎 近松座訪露公演」はとても大切なイベントになると確信しています。この公演は世界的にも有名な「国際チェーホフ演劇祭」の招聘プログラムとして上演される予定です。1928年の、初の歌舞伎海外公演の時と同じように、会場がお客様、ロシアのファンでいっぱいになりますようにお祈り申し上げます。ロシアのファンは世話物の『傾城反魂香』、舞踊の『吉野山』を、首を長くして楽しみに待っております。


【迫本淳一】(松竹株式会社 代表取締役社長)
 「松竹大歌舞伎 近松座訪露公演」がロシアにおける日本年認定事業として開催されますこと、大変光栄に存じます。

 歌舞伎の海外公演は、1928年より約90年間に渡って、これまで38ヶ国で72回の公演を行っております。1928年のロシア公演が歌舞伎の初めての海外公演でございます。そこから数えまして今回5度目のロシア公演になります。近くは2003年に坂田藤十郎(当時鴈治郎)さん、中村鴈治郎(当時中村翫雀)さんで行かせていただいて、今回は1928年の公演と同じ2都市で、藤十郎さんのご子息である鴈治郎さんと扇雀さんとで公演をさせていただくことになりました。

 私どもの歌舞伎をロシアの方々にご覧いただけることを楽しみにしておりますし、これが少しでも日露の文化交流に貢献できればと思っております。


【中村鴈治郎】
 私は15年前、2003年のロシア公演に出させていただきました。人生で初めてロシアに行かせていただきました。ロシアの方々の国民性として、舞台芸術に対して大変関心が高い、理解が高いということを感じた公演でした。その時は『曽根崎心中』という、所謂、歌舞伎の様式美というよりも、ドラマとしての芝居を持っていきました。どう理解していただけるのかなという心配はありましたが、言葉の壁を乗り越えて一切関係なく皆様に喜んでいただきました。

 今度は『傾城反魂香』というお芝居を持っていくわけですが、これも所謂ドラマでございます。もう一つの『吉野山』は歌舞伎の様式美を持った舞踊でございます。『傾城反魂香』はロシアで上演するのは初めてかと思いましたが、何と1987年に父(坂田藤十郎)と中村富十郎の兄さんでやられておりました。ロシアの方々には2回目、もしかしたらその時に見ている方もいらっしゃるかもしれません。楽しんでいただけるのではないかと思います。主人公の又平は、前半はほとんど話しません。自分の体で表現して皆様に伝えるもので、その辺の夫婦愛、情熱から奇跡を呼ぶ芝居です。『吉野山』の方は綺麗な様式美としての歌舞伎を楽しんでいただけると思います。両演目とも、相手役が弟の扇雀でございますので、気心が知れております。

 ややこしいのは、2003年の時には父が鴈治郎で、私が翫雀でございました。今年行くのも鴈治郎でございますが、代が変わりまして私が鴈治郎でございます。鴈治郎襲名をいたしまして初めてのロシア公演です。以前行きました父鴈治郎は現在坂田藤十郎になっております。ロシアの方々に、同じ人だと思ったら違ったと思われるといけませんので、私が襲名して鴈治郎になっております。

 芸術監督である父の藤十郎でございますが、近松座として訪露公演ができることを大変喜んでおります。光栄だと伝えてほしいと申しておりました。私もまたロシアで歌舞伎ができることを大変楽しみですし、皆様に喜んでいただきたいと思います。


【中村扇雀】
 昨年の秋頃にこの公演のお話をいただきました。一年先の話で、それから毎月毎月舞台に出続けておりますので、ロシアの公演も、その毎月の芝居の中の一つぐらいのつもりだったのですが、記者会見がロシア大使館であると聞き、また内容が「ロシアにおける日本年」のメインイベントであるということを伺いまして、今日大使館に入って、日本の代表としてロシアの大使館で記者会見を行うということで実感がだんだん湧いてきまして、これは大変な責任を負っているということを一番痛感しております。

 今回、近松座で近松門左衛門の『傾城反魂香』をロシアでできるということ、大変嬉しく思っております。私は『傾城反魂香』の女房おとく、『吉野山』の静御前をさせていただきます。

 『傾城反魂香』は、又平の話せないもどかしさがあり、そして一念発起したことによる奇跡が起こる、その奇跡を妻が支えるという物語です。奇跡が起こるというのは世界共通に感動を呼ぶ芝居だと思います。ロシアのお客様にその夫婦愛を十分に伝えたいと思います。『吉野山』は日本を代表する舞踊の演目です。女方の代表的な演目でもありますので、「あの人、男なの?」と思っていただけるように勤めたいと思っています。

 歌舞伎は世界に発信できる日本の文化の代表だと思っています。それを私が今回勤めさせていただくということは大変に大きな責任だと思っています。ですが責任というよりも期待の方が強く、期待でいっぱいでございます。


【森喜朗】(東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会 会長)
 私の役割は、日本の言葉でいえば仲人ですね。今日はその披露宴といったところでしょうか。そういう感じがいたします。大変嬉しく思っております。

 2003年の公演では私も『曽根崎心中』をモスクワの劇場で拝見しておりまして、その熱演に涙したのを覚えております。芝居が終わりまして、周りのお客様達が私に「あれは本当に親子か?」と言うんですね。恋人同士の役を、息子(当時:翫雀)が男を演じ、父(当時:鴈治郎)が女を演じたわけですが、その二人の姿を見ていると本当に女性と男性の熱愛なんです。それにロシアの方々は驚いていました。大変熱心にご覧になっておられたのも印象に残っています。

 今度の公演で「あの時の鴈治郎さんだ!」と間違えられることもあるかしれません。「今回はその息子さんたちですよ!」とちゃんと説明をしなければいけないと思っております。本当に素晴らしい公演ができること、日露の文化交流の大きな礎石になっていただきたいと思っております。

 仲人といたしましては、結婚式がモスクワで行われる、そしてサンクトペテルブルクで行われるということであります。晴れて万歳と言えるように是非頑張っていただきたいと思います。