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橋之助が意気込みを語りました~6月国立劇場歌舞伎鑑賞教室『俊寛』


 歌舞伎を気軽に楽しんで頂くため、人気作品をフレッシュな俳優陣でご覧いただく国立劇場歌舞伎鑑賞教室。6月は近松門左衛門の傑作『 俊寛(しゅんかん)』が上演されます。舞台は平家全盛の平安末期、平清盛への反逆計画「鹿ケ谷の陰謀」事件が発覚し、首謀者として絶海の孤島“鬼界ケ島”に流された俊寛らは、いつか都へ帰る日を心待ちにしていた・・・
 十年前の鑑賞教室で初めて俊寛僧都を勤めた中村橋之助が公演に向けて意気込みを語りました。


 

中村橋之助
 『俊寛』は、小さい頃から先代の(十七代目中村)勘三郎おじさんの舞台をずっと袖で見たり、お芝居の真似をして遊んでいた思い出深い作品でしたので、10年前、鑑賞教室で初めて勤めさせていただいた時は夢のようで、仕度の鏡の前で「本当に、俊寛ができるんだ」と自分の頬をツネってみた思い出がります。この時に一番嬉しかったのは、最初は客席で騒がしかった男子学生たちが、だんだんおとなしくなって、後半ですすり泣きが始まって、最後には拍手が鳴りやまなくなってしまい、鑑賞教室で唯一カーテンコールを勤めさせていただいた事です。挨拶を涙ながらにしたことも懐かしく思い出します。


俊寛僧都:中村橋之助


 近松門左衛門は "青春のグラフィティ"のような作品を描きたかったのではないでしょうか。実在の俊寛は34~35歳位、鹿ケ谷のクーデターを起こして志半ばで流罪となっても、自分を捨てていない、世を捨てていない、まだスイッチが入る時を待ち心は折れていない、そういう人間性を描きたかったのだと思います。ですから、張りぼての芝居ではなく、等身大の人間が舞台上に立つことで引き込む力が生まれるのではないかと思っています。自分も俊寛の実年齢より少し上になり、やっと俊寛が自然体でできる歳になった、というのも今回楽しみですし、無になって、そこに等身大の人間が居るということを大切に、心して勤めたいと思います。

 昨年亡くなった父(七世中村芝翫)が、児太郎(兄・中村福助の長男)のことを心にかけておりましたので、こうやって一緒に『俊寛』に出て、彼が千鳥を勤めるというのはとても楽しみです。芝喜松さん、芝のぶさんという家の一門の人たちを含め、團蔵さん、権十郎さんと一緒に良い舞台にしていきたいなと思っています。実は・・・私の次男の宗男が今中学3年生ですが、このお芝居を学校で見に来るそうです。昨日家に帰ったら「お父さん、昨日から国語の授業で『俊寛』を始めたよ」と言っておりました(笑)。

観劇前の工夫を凝らした、大谷廣太郎による解説「歌舞伎のみかた」も楽しみな国立劇場6月歌舞伎鑑賞教室。詳しくはこちらをご覧下さい。