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菊之助が意気込みを披露~国立劇場3月歌舞伎公演『梅雨小袖昔八丈 -髪結新三-』


 国立劇場の 3月歌舞伎公演は“四代にわたる芸の継承”をテーマに、桃井若狭之助と加古川本蔵の絆を描いた「忠臣蔵」のサイドストーリー『増補忠臣蔵 -本蔵下屋敷-』と、粋でいなせな江戸世話物の名作『梅雨小袖昔八丈 -髪結新三-』の二演目を上演します。
 河竹黙阿弥が五代目尾上菊五郎のために書き下ろした江戸の小悪党新三に、当代尾上菊五郎の監修のもと、尾上菊之助が初役で挑みます。

【尾上菊之助】
 明治6年に五代目尾上菊五郎が初演いたしました『髪結新三』は、六代目尾上菊五郎二代目尾上松緑のおじ様、そして父(七代目尾上菊五郎)と上演を続けている、音羽屋の芸として本当に大切な演目でございます。皆さんには父の新三が目にあると思います。父に監修していただきますが、とにかく父の教えを守り何とか食らい付いて髪結新三になれるように、そして、是非それを継承したいとう気持ちを強く持っております。

 『髪結新三』はとてもやりたい役でした。ただ、私は20代の頃から女方を中心に勉強をしてまいりまして、近年に少し線の太い役ですとか、『魚屋宗五郎』も経験させていただきました。やりたい気持ちと、市井の人物というものを果たして自分が描けるのかどうかという思いもありました。
 ですから、白子屋お熊から下剃勝奴と勉強をさせていただいて、父のそばで新三を見させていただきました。いつかはやってみたい、という思いがずっと募っておりました。

 江戸から明治になって、河竹黙阿弥はなんとか江戸の情緒を残そうと思ってこの作品を書かれたのだろうと思います。職人としての江戸の人物として、どういうふうに生きられるかというのが非常に高いハードルです。とにかく江戸に生きている人になれるように・・・実をいうと勝奴をやっている時でも非常に苦労をしました。父がやっている新三と三津五郎兄さんがやってらっしゃる大家さんの間に、自分が勝奴で出させていただいて、初日あたりは果たして自分がその雰囲気にあっているのか、いないのではないかと不安の中にいました。日にちが経つにつれて、自分のしゃべっている言葉や、居住まいとか空気が体に馴染んでくるんですね。そこに居させていただいたことは自分の中で大きな財産です。
 とはいえ今回は新三ですので、髪結の手順も一から流れるようにできないといけません。しかも刺青者なので、そういう表と陰の二つの部分を出したいなと思っています。黙阿弥は五代目菊五郎に当て込んで颯爽とした新三を書いています。代々の新三の役者はそれを目指したのではないかと思いますので、私も五代目の新三を最終的には目指していきたいと思っております。

 お陰様で父と同じ舞台に立たせていただいているので、セリフ廻しなどは耳に残っています。ただ、役として生きるということは究極だと思います。幕が開いて、幕がしまるまで新三として生きる。父は、新三ってこういう人だったんだとお客様に想像していただける、生きている新三というものを演じていると思うので、そうなるには大変な道のりだと思います。父の新三は、粋ですよね。江戸の粋。
 父とは何気ない時に芝居の話をすることがあり、それを聞き逃さないようにしています。『魚屋宗五郎』の時もかなり細かく指導していただきました。今回も父が大事にしている役なので、かなり細かく教えてくださると思います。五代目、六代目、父と本当に大事にしてきた音羽屋の演目なので、命を懸けてやりたいと思っています。

 同時上演される『増補忠臣蔵』は鴈治郎家にとってもとても大切な役、演目だとお聞きしました。音羽屋にとってもこの『髪結新三』はとても大事な役なので、その二つが一月に一つの劇場で上演されるということは中々ないことですので是非注目していただきたいと思います。