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仁左衛門が10月国立劇場『通し狂言 霊験亀山鉾』への意気込みを語りました


  10月国立劇場歌舞伎公演では、四世鶴屋南北が書き下ろした仇討物の傑作の一つ『霊験亀山鉾(れいげんかめやまほこ)』が上演されます。片岡仁左衛門が悪党二役に挑む話題の舞台。公演に先立ち仁左衛門が意気込みを語りました。

 

片岡仁左衛門
 15年振りに、国立劇場で『通し狂言 霊験亀山鉾(れいげんかめやまほこ)』を上演させていただくことになりました。本当に嬉しゅうございます。

 悪人が活躍するお芝居ですが、その中で、変な意味でなくて「色気」もありますし、そして「冷酷さ」も混じっていて、「華やかさ」と「暗さ」、「陰」と「陽」というのがうまく入り混じって構成されています。
 お客様には、残酷と感じさせないように、「ああ、綺麗だな」「楽しいな」と思っていただけるような雰囲気、そして「退廃的な美」といいますか、昔の錦絵を見ているような色彩感覚「芝居の色」、そういうのを楽しんでいただければと思っています。

 今回は藤田水右衛門と八郎兵衛の二役を勤めます。演じ分けというのは特には考えてはおりませんが、舞台では、身体が自然と動いていくんですよね。以前国立劇場で上演させていただいた『絵本合法衢(えほんがっぽうがつじ)』の左枝大学之助は武家の悪人でしたが、今回は市井の悪人。その違いも、やはり理屈や技術とかではなく、あまり考えずに、その本を読ませていただいてやっていると、なにか自然と身体が役になっていきます。
 八郎兵衛は初演の際、昔の錦絵に描かれていた八郎兵衛の衣裳・鬘などをヒントに、「あぁ、これやったら、こういう人物だろう」と役を作っていったことを覚えています。水右衛門は、『絵本合法衢』の左枝大学之助ほどの大物ではない、しかも浪人で職を探していたわけですから、その程度の悪人ではありますが、悪としてはかなり悪・・・そう思って演じていると、自然と勝手に身体が動いていくんですよね。セリフまわしもね。

 初演で「中島村焼場」で急遽、舞台で本雨を降らせることにしたんです。稽古中に決めたのですが、国立劇場さんと相談して、間に合うか、いろいろあったのですが・・・やはりあそこで雨を降らせてよかったなと、一つの見せ場としてね。楽しかったですね、とにかく創り上げるのが。もちろん今回も降らせます。

 国立劇場のおかげで、歌舞伎は上演のしかたが随分かわりましたよね。50年前の開場当時、あまり「通し狂言」というのは上演されていませんでしたが、国立劇場が「通し狂言」というものを主体に上演されてこられて、さらには古い狂言を「復活」もされてきました。
 私は、第1回の「学生のための歌舞伎教室」にも出演させていただきました。その時勤めた『国性爺合戦』の甘輝、第3回では『仮名手本忠臣蔵』四段目の大星由良之助を勤めさせていただきましたが、この二つのお役は、私にとって大きな宝であり、思い出でもあります。