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三越劇場初春新派公演『華岡青洲の妻』 出演者が舞台への熱い思いを披露


 平成29年1月三越劇場にて、初春新派公演『華岡青洲の妻』が上演されます。公演に先立ち水谷八重子、波乃久里子、襲名して初めての初春公演を迎える喜多村緑郎に加え、先日歌舞伎から劇団新派への入団を発表したばかりの市川春猿が集い、本公演への熱い思いを語りました。

【水谷八重子】
 来年の初芝居で“日本の誇る華岡青洲を少しでも人に広めることができる”、そんな機会を与えられたことを、非常に光栄で嬉しいことと思っております。世界で初めて全身麻酔を用い、初めて乳がんの手術をした華岡青洲という偉人を、女の葛藤を絡めながら、“本当に日本が誇るべき人がいたんだ”ということをお客様におわかりいただけたら幸せだなと思っております。ひとりでも多くのお客様に観ていただきたいお芝居でございます。

 私はいまだに杉村春子先生に押しつぶされております。母(初代水谷八重子)の役をやった時には、やはり母に押しつぶされる感じでしたが、自分の母親ということでものすごい抵抗があって、その抵抗する力がエネルギーになってやってきたような気がします。
 杉村先生が相手だと抵抗する力が全くないんです。ただ、ただ押しつぶされるんです。いかに今から初日までの間に杉村先生に抵抗できるところまで、抵抗の糸口だけでも見つけられたらなと思っております。『ふるあめりかに袖はぬらさじ』では抵抗する箇所を何とか見つけることができたんですけれども、この『華岡青洲の妻』だけは杉村先生はいまだに私の上に大きくのしかかっていらっしゃいます。杉村先生のお膝にすがるような思いでこの於継をやらせていただきます。

 加恵役の春猿さんとは、まだ台本をいただいてお互いに読んでいる段階です。いざ、台詞をやり取りして、二人の関係がどういうふうに展開するのか、初めてですのでまだわかりません。良い関係を築いて、良いバトルをお見せできればと思っております。

【波乃久里子】
 私は1月に舞台に立てないことがすごく嫌で、生涯でまだ1月を外したことがないんです(笑)。また今度も、1月から三越劇場に参加させいていただくことを本当に嬉しく思います。そして、このお芝居は私が20代でしたか、父(十七代目中村勘三郎)と初代水谷八重子先生、杉村春子先生とやらせていただいた思い出深い作品でございます。それを1月に河合雪之丞さん、喜多村緑郎さん、そしてお姉ちゃま(水谷八重子)とやらせていただくことは本当に役者冥利に尽きます。

 初演の時に、有吉佐和子先生が「小陸というのは私なのよ」とおっしゃいました。小陸というのは青洲の家から見ている眼・・・小さな家だけれども青洲の家を見ているのは小陸だと。20代の時はこの意味が全然わかりませんでした。ただ、八重子先生と杉村先生の間に挟まって、なんとか小陸を演じたいというだけ。
でも、今考えると本当にそうなんです。小陸は20代ですけれども、俯瞰で見ている・・・もう一つ小陸を深く理解して、有吉先生がおっしゃったようにやれたらなと思います。
 21歳から42歳になるまで演じる一番若い役ですので、何とか若いお二人よりも可愛く、おもちも食べずにスリムになってお正月にお目にかかりたいと思います。

 来年は、数多くの劇団新派のお芝居が舞台にかかっていただきたいと思います。緑郎さんと雪之丞さんがせっかく加わっていただいたわけですから、新派のお芝居というものを根強く広げていきたいと思います。


11月29日(春猿)と12月1日(久里子)の誕生日を祝ってケーキと花束が贈られました


【喜多村緑郎】
 本年は新派に入団させていただき、喜多村緑郎を襲名させていただいたこともあって、とにかくいつもの年以上に、本当にみなさまにお世話になった年でございました。そして来年は、研修生時代から長らく苦楽を共にしてきた春猿さんが河合雪之丞という名となって、新たなスタートをするということで、30年来の友としてこんなに心強いことはありません。
 華岡青洲のお役も、尊敬する十二代目の成田屋さん(市川團十郎)や播磨屋さん(中村吉右衛門)というお歴々の歌舞伎俳優の方がなさってきたお役ですので、このお役をいただけたことは本当に光栄です。来年は正月から良いスタートが切れるのではないかなと思っております。

 この作品は壮大で普遍的な、医学と医術に関する大きな人間のテーマと並行して、日常の女性たちを中心とした機微を描いたものだと思います。人間の最大のテーマと、我々の普段の実寸大というか、そういうものが並行して時が流れていく素晴らしい有吉先生の作品だと思っております。その中で青洲の医術に対する一身さ、そういうものがお歴々の方の青洲像というか、そこが一番大事なのではないかなと思います。医術に対する求道者ともいうべき青洲になれば良いなと思います。

 舞台の先輩は、皆さん生きた教科書だと思っております。ご本人が口でおっしゃらなくても、八重子さん、久里子さんの背中を見ていますと、後ろには花柳章太郎先生や先代の八重子さんの影が必ずあるので、みなさんが培われてきたものは絶対に隠すことができないのだな、と思います。八重子さん、久里子さんは新派の俳優としての、僕にとっては生きた教科書です。

【市川春猿】
 先だって新派入団の発表をさせていただきまして、名前も河合雪之丞を名のらせていただく第一回目の大きな公演が、この1月の『華岡青洲の妻』というお芝居です。私にとりましては重い、重いお役でございますけれども、諸先輩方に胸を借りるつもりで、一生懸命つとめさせていただきたいと思っております。本日は私の誕生日でございますので、そういう時に発表できるということも嬉しく思っております。

 緑郎さんとは夫婦役、恋人役はずいぶんやっておりまして、右手から出てくるなとか左足から出てくるなということが分かる、予想できるくらいの数を一緒にやらせてもらっています。これからもどんどん、そういう想像の域が広がるくらい長いこと一緒にやっていきたいと思っております。

 このお芝居は場面も転換も少なく、音も少なく、本当にお芝居でお客様の心に届かせる、要するにビジュアルでは誤魔化せない、すごく大変で演じる方にとっても非常に難しいお芝居だと感じています。今まで歌舞伎で女方としてやってきた中で、新派のとてもリアルなお芝居にどのように女方として溶け込んでいけるのかということも含めて、私にとってはすごく課題の多い舞台になるなと感じています。