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愛之助、吉弥、壱太郎が意気込み~大塚国際美術館 第五回システィーナ歌舞伎


 2014年2月14日~16日の3日間(6回公演)、 大塚国際美術館(徳島県鳴門市)では、ヴァティカンのシスティーナ礼拝堂を原寸大に立体再現した「システィーナホール」を会場とする新作歌舞伎『 満月阿波噺(まんげつあわのよばなし) フィガロ』を上演します。
 オペラの名作「フィガロの結婚」をモティーフに、荘厳な「システィーナ・ホール」に合わせた、水口一夫作・演出、藤間勘十郞振付による創作歌舞伎。システィーナ歌舞伎へは3年連続の出演となる片岡愛之助、第1回から連続出演の上村吉弥、第2回から参加の中村壱太郎に加え、作・演出の水口一夫が公演に先立ち意気込みを語りました。

【水口一夫(作・演出)】
前4回のシスティーナ歌舞伎でも作・演出をさせていただきましたが、ミケランジェロの原寸大の「最後の審判」をはじめ、天井画が覆い尽くしている中で歌舞伎をするというのは、ミケランジェロに負けないようにと言うと大げさですが、いつも非常にプレッシャーのかかる場所です。今回はフィガロということで喜劇でございます。ご存知の通り、モーツァルトの名曲でなかなかレベルが高いのですが、「和と洋のコラボレーション」ということで、徳島の弦楽四重奏のみなさんや歌舞伎の音も組み合わせて、いかに歌舞伎版のフィガロを作っていくか、というのが大きな課題です。

フィガロ役を愛之助さん、スザンナ役を壱太郎さん、そしてルジーナを吉弥さんに勤めていただきます。それぞれフィガロは福江五郎寛之、ルジーナは露路(つゆじ)と日本の名前に置き換えるつもりです。また、愛之助さんが「今度は歌わせてくれ!」と仰っておりますので、それならば歌わせてみよう、と思っております。そういたしますと、壱太郎さんにも、吉弥さんにも歌ってもらう事になるかもしれませんね(笑)。根本はあくまでも歌舞伎を創っている、キザな言い方をいたしますと「傾(かぶ)く心」、その精神を忘れないように舞台を創っていきたいと思います。




【片岡愛之助】
「和と洋のコラボレーション」をコンセプトにしているシスティーナ歌舞伎ですが、新しい事、最先端の事をすること、かぶく事、その心を私たちは忘れてはいけないと思っています。古典を先輩から受け継ぎ後輩へ渡していく、これは大前提の事ですが、それ以外に、新しい物を創ってくことも大切です。システィーナ歌舞伎で創作された『伽羅紗(ガラシャ)』(第一回公演)や『GOEMON 石川五右衛門』(第三回公演)はともに別の劇場でも再演されていて、とても嬉しい事です。これからも再演されるような作品をどんどんと創っていきたいと思っています。

『GOEMON』での衣裳はとても奇抜でまさに"キンキラキン"、そのまま紅白歌合戦にも出演できそうです(笑)。それは礼拝堂のあの壁画に負けない物をという発想からうまれてくるもので、それくらいの派手さが必要だと感じ、思い切って創ったことがとても良くて、皆さんからもご評判をいただきました。普通の舞台とは違う難しさもありますが、こうして毎回挑戦させていたくというのは、役者としても楽しみであり、勉強の場にもなっています。

"芸術の中で芸術をする"というのはとても魅力的です。あの美しい礼拝堂に徐々に近づいていけるような作品をこれからも創っていきたいと思いますが、それには、僕ら歌舞伎役者が洋の世界にとけ込めるかというところがとても重要だと感じています。初めて大塚国際美術館に伺ったときには、1時間半くらいで一回りできるかとおもっておりましたが、全く時間が足りませんでした。一粒で二度美味しいと言いますか、これを機会に歌舞伎と大塚国際美術館を観て、楽しんでいただきたいと思います。


【上村吉弥】
第一回の公演のおりに『伽羅紗(ガラシャ)』というお芝居をさせていただきましたが、その演目をこの11月に永楽館という劇場で再演をさせていただいて参りました。本当に思い出深い作品でございます。また、360度全てにお客様がいらっしゃる中でお芝居をするというのも、初めてシスティーナ歌舞伎で経験させていただきました。美しい壁画の前でお芝居しますから、衣裳もなるべく原色に近い色を使うように心がけ、頭もなるべく負けないように、床山さんや鬘屋さんと話し合ったりいたしております。

新しい歌舞伎を勉強するからこそ心理的なものが生まれてくる、という事を先輩から伺ったことがあります。もちろん心理があっての事ですが、古典は形から入っていきます。しかし、新作では形は別として心理的なことがとても大切で、本当に勉強になります。今回は『フィガロ』という喜劇です。喜劇は稽古をたくさん積まないといけないと思っおりますので、できるだけお稽古を重ね、みなさんに笑っていただけるように、楽しんでいただけるようにしたいなと思います。


【中村壱太郎】
第二回から出演させていただいておりますが、なんといっても創作の場、ゼロから芝居を創るという機会に毎年携われることを本当に嬉しく思っています。そしてこの空間、昨年も『主天童子』という作品で、愛之助さんと一緒に、最後この壁画を見ながら引っ込みましたが、照明や絵の美しさ、空間の素晴らしさに感動した事を覚えています。またお客様と素晴らしい空間を共有できることを今から楽しみにしています。

昨年の『主天童子』では、最後に頭にティアラを付けさせていただきました。そうしたちょっとした遊びではありませんが、洋というものを意識して役作りや扮装を創っていくのはとても楽しいです。こうした挑戦をするには、歌舞伎役者がやるからこそ歌舞伎になるという事を信じていないとできない気がします。フラメンコをやるにしても、洋舞を踊るにしても、歌舞伎役者が歌舞伎をしているという事を意識しながら演じています。そして「歌舞伎はここまで洋とコラボレーションができる」、という強い気持ちで勤めたいと思います。