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『伊賀越道中双六』記者懇親会が行なわれました~国立劇場11月歌舞伎公演
11月3日(日)から26日(火)、国立劇場では
『伊賀越道中双六』が上演されます。剣豪 荒木又右衛門が義弟の助太刀をした「伊賀上野の敵討」は「曽我兄弟の仇討」や「赤穂浪士の討入り」と並ぶ《日本三大仇討》の一つです。敵討に至る過程を道中双六に見立てた趣向で、登場人物様々な思いが交錯する人間ドラマ!
公演に先立ち記者懇親会が行なわれ坂田藤十郎、中村翫雀、中村扇雀、中村虎之介、親子三代が揃って公演への思いを語りました。
【坂田藤十郎】
『伊賀越道中双六』を通しで上演させていただきます。十兵衛は父(二世中村鴈治郎)も祖父(初代中村鴈治郎)も大好きで勤めておりますし、私も色々な役で出演して参りましたから、このお話はなにかこう、自分の家の作品のような感じがいたしております。特に今度は、十兵衛の父・平作を私の倅の翫雀が勤めます。親子が逆を演じるというのも滅多に無いことだと思いますし、扇雀はお米、孫の虎之介は志津馬と、親子三代で勤めることになりますから、今までとは一味違った、深い愛情に包まれた『伊賀越道中双六』になるのではないかと思っております。
お芝居の途中で、十兵衛と平作が客席に降りていくのも大きな見せ場の一つですし、そこでの"捨て台詞"も楽しみです。今度は、平作を演じている翫雀に荷物を持たせて歩くことになりますが、「80歳!そんな年寄りに荷物持たせて・・・」なんて、年齢のことにも触れるような、楽しい捨て台詞でお客様に楽しんでいただこうと思っています。そうすると後の悲劇が盛り上がる、ここで笑いをいただくと悲劇がさらに深いものになると思っております。
十兵衛は、初代鴈治郎の芸風というものを大事にしながら創り上げる役だと思います。わたしもお米を随分父の十兵衛のときにさせてもらいましたが、その時父は、祖父の和事と立役とのきっちりした分かれ目のセリフ、柔らかいところと商人としての気骨のあるところの違い、そういうところがとてもよかったと良く申しておりました。祖父の芸を尊敬してそのように勤めないと、十兵衛という役は生きてこないのではないかと思います。上方の和事芸にはおかしさ楽しさに加え、なにか人間のもつ喜怒哀楽が深く出てきます。ぜひお楽しみ下さい。
【中村翫雀】
私が父親の平作役をやらせていただけるのも、父・藤十郎が元気なおかげでございます。父とは何度も共演しておりますが男と女ばかりで、男同士というのは初めてではないでしょうか。また、弟・扇雀の父親ということにもなり、それも初めての事です。また今回はもう一役、誉田大内記も勤めさせていただくので、こちらも楽しみです。
今回平作というお話を伺ったとき、頭に浮かんだのが勘三郎兄さんのことでした。初役で平作をされている舞台を拝見して、この役は年齢じゃないという事を実感したことを覚えております。9月は国立劇場小劇場の文楽公演で同じ『伊賀越道中双六』を通しで上演されていて、お客様が沢山入っていると伺っています。文楽を見て泣いたという方も随分いらっしゃるようで、負けてはいられないなという思いでいっぱいです。
【中村扇雀】
『伊賀越道中双六』に初めて出演させていただきます。初代鴈治郎の当り狂言「玩辞楼十二曲」というのがございますが、「玩辞楼十八番」というのを作っていたら、この狂言は必ず十二の次に入っていたであろうと思われるくらいに、家には所縁の深い演目です。祖父の十兵衛は、客席に降りてきてからとても楽しかったのを良く覚えております。それにしても、平作を兄が勤めるとは夢にも思っておりませんでした。
歩き方や、身体から出てくる空気、そうしたものは父を初めとするこの家系ならではのもがあって、他の方が真似しようとしてもなかなか出来るものではないですし、また義太夫狂言では、言葉のイントネーションもとても大切で、そうしたものが作品を生かしていきます。私もこの家系に産まれた役者ですから、これらを繋げていくのも重要な役目だと思っています。今回は息子の虎之介も出演いたしますが、父の舞台に触れ、それらをきちっと身体に染みこませてほしいなと思っています。
【中村虎之介】
家族三代で舞台に出演できるのはとても貴重な経験ですが、祖父、伯父、父、皆偉大な先輩ばかりで、良い緊張感を感じています。以前上演された舞台の記録を見ておりますが、志津馬は重要で、むずかしいお役です。白塗りの立役というのもあまり経験が無く、とても新鮮に感じています。最後には立廻りもあるので、しっかりと勤めたいと思っています。

