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新派名作撰『葛西橋/舞踊 小春狂言』に笑三郎、春猿、月乃助が出演します


 10月三越劇場では、 新派名作撰『葛西橋/舞踊 小春狂言』が上演されます。『葛西橋』は、世間に背いてまでも愛を貫いた男女の退廃的な生き方を描いた劇作家北條秀司の作品、市川春猿が3役早替りで勤めます。『舞踊 小春狂言』は、川口松太郎作の『小春狂言』をモチーフにした華やかで粋な新作舞踊です。
 公演に先立ち、市川笑三郎市川春猿市川月乃助が意気込みを語りました。

 

市川笑三郎
  私は新派は2作目、初めて新派に出演させていただいたのは、春猿さんが主演された『滝の白糸』で三味線弾きのお辰というお役でした。新派では歌舞伎から離れた演技をしなくてはいけないのでは、という先入観を持っておりましたが、実際はそうではなく、歌舞伎の要素そして女方でなければ出せない魅力を十二分に発揮して良いということを、その時に身をもって体験させていただきました。

 今回の『葛西橋』は、『滝の白糸』が歌舞伎で言えば時代物にあたるような作品とすれば、それとは全く世界観の違う、リアリティのある作品と言えます。私の勤めるお辰というお役は、物語を俯瞰してみるというか、それぞれに第三者として手を差し伸べたり言葉をかけたりという立場ですので、言ってみればお客様の代弁者。台本を読んだ時の素直な感情を込めながら、それぞれのお役に接していきたいと思っております。
 『小春狂言』では姉芸者小光を勤めます。歌舞伎の舞踊とはちょっと趣向が違っていて、新派ならではの世界観の踊りに歌舞伎俳優である私達がどのような色を出せるかが楽しみなところでございます。


市川春猿
  『葛西橋』では、3役を早替りで勤めさせていただきます。それぞれの人物像を練り上げて、1人1人丁寧に分けて勤めていくことがとても大切です。新派は明治・大正期を舞台にした作品が多いのですが、この『葛西橋』は昭和の時代をモチーフにしたお芝居です。歌舞伎の世界とはちょっと違い、人は誰しも良い人にもなり悪い人にもなる、そういう人間の機微というものが凄くリアルに描かれている作品です。
 私の勤める姉の娼妓おぎん、妹の菊枝は、それぞれがお互いを思いながらも、友次郎を中心にして妹憎い姉憎いという感情も出て参ります。そうした歪んだリアルな感情も十分に表現されていて、非常にやりがいのある難しいお役です。もう一人のフルーツパーラーの女将美也子は、とてもインパクトがあり印象に残るお役です。三者三様のお役を、ぜひ楽しみにしていただきたいと思っています。

 今回の公演では最後に舞踊の『小春狂言』を上演します。新派の公演でも過去には歌舞伎のように、"お芝居"と"踊り"という上演形態があったと伺っています。近年は、そのような公演も少なくなっているということですので、過去に新派が上演していた形を復活させるというのも良いのではないでしょうか。


市川月乃助
  私も新派は一昨年の『日本橋』に続き2作目の出演になります。『日本橋』は、泉鏡花先生の作品、『葛西橋』は北條先生の作品で、だいぶ世界観が違います。とにかく非常にリアルな世界観の物語で、初めて台本を読んだときは本当に驚きました。私の勤める友次郎というお役は、女にはだらしない、博打は打つという、絵に描いたようなダメな男(笑)。あまりにも退廃的で人生を転がり落ちていく、今までになかったお役で、とても楽しみにしています。

 笑三郎さんや春猿さんといった気心の知れたメンバーと、こうして新派の名作に出演できるというのは本当に感慨深い気持ちでございます。これからも歌舞伎で培ったエッセンスをもっと新派のお芝居に活用していただけるように、新派作品にも全力投球で頑張っていきたいと思っております。