尾上 菊五郎 (7代目) オノエ キクゴロウ

屋号
音羽屋
定紋
重ね扇に抱き柏、四ツ輪
所属
伝統歌舞伎保存会会員

プロフィール

▼菊五郎劇団の総帥という江戸歌舞伎の長としての芸の上からも、日本俳優協会理事長という全歌舞伎俳優を代表する立場からも、現代の歌舞伎界を名実ともに体現する。代々の菊五郎は江戸歌舞伎、とりわけ黙阿弥物など世話狂言の名手としてその規範となる芸統に立ってきたが、同時に常にその時代の歌舞伎の歩みの規範としての芸を示す役割も果たしてきた。七代目である当代は、十六夜清心、三千歳直侍など、男女いずれの役も自家薬篭中のものにするなど、芸域の広さにおいて、菊五郎代々としてもまた当代の歌舞伎界でも群を抜く。新しい歌舞伎座の杮(こけら)落とし公演で演じた『白浪五人男』の弁天小僧は半世紀余にわたって演じてきた当たり役だが、自身の芸の熟成を示すと同時に、現代の歌舞伎の達成を示す象徴の意味も果たしていた。新奇を衒わず、古きにも偏せず、その赴くところは自ずから、当代の歌舞伎の良識と同時に奥行きの深さを示している。

〔上村以和於〕

経歴

芸歴

▼1942年10月2日生まれ。七代目尾上梅幸の長男。48年4月新橋演舞場『助六曲輪菊(すけろくくるわのももよぐさ)』の禿(かむろ)で五代目尾上丑之助を名のり初舞台。65年5月歌舞伎座『対面』の十郎ほかで四代目尾上菊之助を襲名。73年10・11月歌舞伎座『弁天娘女男白浪(べんてんむすめめおのしらなみ)』の弁天小僧菊之助ほかで七代目尾上菊五郎を襲名。

受賞

▼1972年重要無形文化財(総合認定)に認定され、伝統歌舞伎保存会会員となる。80年3月『都鳥廓白浪(みやこどりながれのしらなみ)』の花子実は松若君で国立劇場優秀賞。82年度芸術祭優秀賞。85年度芸術選奨文部大臣賞。86年度日本芸術院賞。86年度芸術祭賞。90年第十一回松尾芸能賞大賞。91年2月松竹社長賞。95年1月松竹会長賞。95年名古屋演劇ペンクラブ年間賞。98年第十七回眞山青果賞大賞。2000年日本芸術院会員。01年第九回読売演劇大賞優秀男優賞。03年重要無形文化財保持者(人間国宝)。09年第五十回毎日芸術賞。15年文化功労者。16年第六十七回NHK放送文化賞。21年文化勲章受章。

著書・参考資料

▼写真集(大倉舜二写真)『七代目菊五郎の芝居』(1989年、平凡社)、長谷部浩『菊五郎の色気』(2007年、文藝春秋)

舞台写真