澤村 由次郎 (5代目) サワムラ ヨシジロウ

屋号
紀伊国屋
定紋
釻菊、波に千鳥
所属
伝統歌舞伎保存会会員

プロフィール

▼人間国宝・澤村田之助の弟。女方の家系の紀伊国屋の中でただ1人立役の道に進んだ。20歳を過ぎてからの初舞台は、歌舞伎俳優として遅いが、芸歴50年を超えた今になると舞台に登場するだけで紀伊国屋らしい風情を漂わせ、いい役者ぶりを見せる。『梶原平三誉石切』石切梶原で、二つ胴の1人として斬られる囚人呑助の嘆きぶりが面白いし、『荒川の佐吉』の無頼漢あごの権六など、あばれて凄味をきかせてもどことなくひょうひょうとした味がなんともいえない。『神明恵和合取組(かみのめぐみわごうのとりくみ)』め組の喧嘩で、鳶の若衆と大立廻りを演じる角力の神路山花五郎は何回も演じている。肉襦袢をつけて大きな体で動き回るのは、肉体的にはつらいだろうが発散できる役と言う。『元禄忠臣蔵』大石最後の一日の片岡源五右衛門や『石切梶原』の梶原方大名などでは背筋をぴんと張って存在感を示し、『一本刀土俵入』の清大工はその人の生きざまを感じさせる味わいを出した。努力を重ねて貴重な役者になった。

〔横溝幸子〕

経歴

芸歴

▼1946年8月8日生まれ。五代目澤村田之助(初代曙山【しょざん】)の三男。67年3月歌舞伎座『忠臣蔵』の木村岡右衛門で五代目澤村由次郎を名のり初舞台。98年名題適任証取得。

受賞

▼2009年重要無形文化財(総合認定)に認定され、伝統歌舞伎保存会会員となる。

舞台写真