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中村梅玉と吉田和生が刀剣博物館を訪れました~国立劇場9月文楽公演・10月歌舞伎公演『伊勢音頭恋寝刃』


 国立劇場では、 9月文楽公演第一部、 10月歌舞伎公演で『伊勢音頭恋寝刃』が上演されます。
 名刀“青江下坂(あおえしもさか)”と呼ばれる刀の詮議を軸にすすむ物語に因み、9月文楽公演で主人公・福岡貢を遣う人形遣い吉田和生、10月歌舞伎公演で貢を勤める中村梅玉が刀剣博物館を訪れ、“青江下坂”のモデルになったといわれる“葵紋康継(あおいもんやすつぐ)”を見学しました。

【吉田和生】
 文楽では、「古市油屋の段」と「奥庭十人斬りの段」を上演します。夏芝居としてとても人気のある作品です。「十人斬り」といっても人形ですから、そう残酷にはなりませんが、やはり刀の重み・魂を心の中で意識して、刀の力で切っていくような形にしなければと思っています。
 貢はまるっきりの初役です。我々の場合、足遣い、左遣いと順に勉強していきますが、初役といっても、足や左を遣っていると、だいたい目安や段取りもつきます。今回は先輩方にうかがって一から創り上げています。

 あらすじは、歌舞伎の通しの方でご覧いただいたら良く分かると思います(笑)。9月の文楽では、「油屋」と「十人斬り」しか上演しませんから、廓での辱めをうけ、それが恨み辛みになって、と簡単にとらえていただければと思います。名刀のやりとりは、ぜひ通し狂言の方でお楽しみください。
 「文楽は少なくとも3回観に来てください」と言っています。音楽でもクラシック、演歌、ジャズが好きな人、いろいろいらっしゃいますし、作品もパッとあう物から全然分からないものまで、いろいろあります。そうして、ちょっとでも面白いと思った方には、また来ていただけたら嬉しいですし、とにかく楽しんでいただけたらと思っています。


【中村梅玉】
 国立劇場で初めて歌舞伎として『伊勢音頭恋寝刃』の通し上演がなされるということで、その記念すべき公演、しかも、文楽さんと続けて上演する機会に、私が貢をさせていただくのは大変光栄なこととありがたく思っています。『伊勢音頭恋寝刃』は刀が主役、貢は結局刀に操られて何人も殺すことになります。そのモデルとなった刀を実際に拝見して、なんともいえない重み、格、見て感じた思いを舞台でも大事にしたいと思います。

 この作品は、実際にあった事件をもとにして創られていますが、刀の“青江下坂”は全く関係していません。それをこの刀に結びつけて作品を創り上げた昔の作者の方の力は本当に素晴らしいと思います。
 今“刀剣ブーム”ということで、“刀剣女子”という、若い皆さんもいらっしゃるようですので、普段歌舞伎をご覧にならない方でも、刀剣に興味のある方は、ぜひこのお芝居をご覧になっていただければと思います。

 貢は私が最も大切にしているお役の一つで、平成4年の梅玉襲名の際にも勤めさせていただきました。本当に周りが素晴らしい皆さんで、父(六代目歌右衛門)が万野をしてくれましたが本当にいい万野でした。父とはいろいろと共演していますが、そのなかでも実にいい、本当に貢がやりやすいようにやってくれる万野でした。
 また、亡くなった團十郎さんが平成16年の海老蔵襲名披露の際、途中で具合が悪くなられて私が代役を勤めました。團十郎さんとは同い年で若い頃から仲が良く、その代わりをさせていただきありがたかったのですが、何しろその團十郎さんがあんなことになってしまい、その想い出もあって貢には強い思い入れがあります。


 文楽と歌舞伎で同じ演目を続けて上演するのは、国立劇場ならではの楽しい趣向。
 鑑賞した“葵紋康継”は、9月文楽公演期間中は小劇場ロビー、10月歌舞伎公演期間中は大劇場一階ロビーで展示を行う予定です。こちらもお楽しみに。