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2013年春完成予定の第五期歌舞伎座、外観デザインが発表になりました

 4月5日、松竹株式会社と株式会社歌舞伎座が、建替え工事中の歌舞伎座の外観デザインを発表しました。

 劇場部分の外観は、瓦屋根、唐破風、欄干など桃山風の外観を第4期歌舞伎座から踏襲した4階建て。ロビーと客席も第4期歌舞伎座のデザインと雰囲気を継承し、かつバリアフリーでより使いやすくなる見込みです。また、地上29階建て高層オフィスビルを後ろに下げることで、一見すると独立した劇場のように見えるよう工夫されています。オフィスビル部分は劇場正面側の壁面に捻子連子格子(ねりこれんじごうし)をモチーフとしたデザインを採り入れ、伝統を損なわない陰影のある外観となります。

 災害時には地下広場や劇場ロビー、観客席などを一時避難場所として開放。約3000人の収容が可能となる、銀座の防災支援拠点としての役割も担う予定です。


 (社)日本俳優協会中村芝翫会長から「新しい歌舞伎座の外観図発表に際して」のコメントが寄せられました。


 「このたび新しい歌舞伎座の外観図が発表されますことは、私たち俳優にとっても、まことに嬉しいことでございます。
 今回の発表に先立ち、俳優協会の理事会で下見いたしましたが、大変好評でございました。それは私たちが長年親しんできた第四次歌舞伎座をそのまま再現したかのような外観だったからでございます。正面ロビーの吹き抜けの大間や客席などの完成予想図も、以前の歌舞伎座を彷彿させるものでございました。客席や舞台も以前の歌舞伎座とほぼ同じ寸法で、舞台のプロセニアムから飾り金具に至るまで、第四次歌舞伎座の部材をそのまま使われるそうでございます。これは私たち俳優にとっても、大変ありがたいことです。以前の歌舞伎座は大変に音響がよく、科白や音楽がよく通り、お客さまにとっても演じる側にとっても、心地よい劇場でした。しかも世界の高名な劇場に負けない格調と品位を備え、長い伝統に培われた雰囲気をもつ懐かしい歌舞伎座が、最新の技術による高い安全性の上に再現されることは、本当に喜ばしいことです。
 先月に起きた未曾有の震災で多くの方々が被災されましたことは、まことに痛恨のきわみでした。歌舞伎に限らず、演劇は多くのお客さまに支えられてこそ、活き活きと演じられるものです。そしてどんな時代や環境にあっても、私たちの芸がお客さまの心を慰め、生きる支えになってほしいと念じております。第三次の歌舞伎座は、完成間際の大正十二年に関東大震災で罹災しましたが、その不運にもめげず大正十四年に開場され、帝都復興のシンボルとなりました。そして昭和二十年の大空襲で再度羅災しましたが、松竹の大谷竹次郎会長の執念と多くの人たちの尽力により再建され、昭和二十六年に第四次歌舞伎座として開場されました。あのときの嬉しさと感動を忘れることはできません。それは敗戦と戦災から甦る戦後日本を象徴する出来事でした。私はその歌舞伎座の舞台に立たせていただき、復興なった平和な日本で歌舞伎を演じられる幸せを痛感しました。歌舞伎はもともと、戦国の世が終わり、平和になった世の中で、鎮魂を念じ、生きる歓びを謳歌するために生まれたといわれています。どのような時代にあっても、芸術文化の灯を絶やしてはならないと念じ、私たち俳優協会は、松竹株式会社と協同して被災地への支援を続けつつ、これからも歌舞伎の伝統をまもり、芸の研鑽に精進して、二年後の歌舞伎座の完成を待ちたいと存じます。」

平成二十三年四月吉日
社団法人日本俳優協会
会長 中村 芝翫

「歌舞伎座建替え計画について」詳しくは、松竹ホームページをご覧下さい。
写真提供:松竹株式会社、株式会社歌舞伎座