中村 京紫 (初代) ナカムラ キョウシ

本名
松本祥康
屋号
京屋
生没年月日
昭和40(1965)年05月14日〜平成29(2017)年08月09日
出身
福岡県

プロフィール

 忘れられない『妹背山』の舞台がある。1998(平成10)年の夏の終わり、新宿の小ホールの「桜梅會」の『吉野川』。現・松本錦吾の剛直な大判事、現・上村吉弥の憂愁の久我之助(こがのすけ)、現・中村京蔵の凛と母性溢れた定高、そして京紫の可憐な雛鳥。4人が性根を肚に師譲りの真摯な熱演を見せ、涙が出る程、感動した。久我様一途の花のような娘心。京紫は美しい人だった。腰元や新造で並んでいても、行儀のいい、しっとりと美貌のこの人は目をひいた。「桜梅會」では、師の四代目中村雀右衛門の舞台を巡業先で初めて見て憬れたという『弁慶上使』のおわさや当たり役だった『伊勢音頭』のお紺など大役を勤め、師の教えをよく体現したと思う。『文七元結』の角海老の娘分お光や『渡海屋』の官女の品格など目に残っている。地方公演などでは『籠釣瓶』の初菊や『鳥辺山心中』の仲居お雪、後年は『反魂香』の将監北の方や『毛谷村』のお幸という至難な老女役も演じ、美貌だけではない実力派に成長していた。若すぎる死が惜しい。

【秋山勝彦】

経歴

芸歴

昭和61年国立劇場第8期歌舞伎俳優研修修了。4月国立劇場『義経千本桜』渡海屋・大物浦の官女ほかで松本祥康の名で初舞台。62年2月四代目中村雀右衛門に入門し、4月歌舞伎座『元禄忠臣蔵』江戸城刃傷の坊主ほかで中村京紫を名のる。平成12年5月歌舞伎座『源氏物語』の官女で名題昇進。平成21年9月伝統歌舞伎保存会会員の第12次認定を受ける。

舞台写真

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