市川 男女蔵 (6代目) イチカワ オメゾウ

屋号
滝野屋
定紋
隅切り角に一葉紅葉
所属
伝統歌舞伎保存会会員

プロフィール

▼古典でも新作でも評判が大事な時代だ。その新作。2019(令和元)年6月の『月光露針路日本(つきあかりめざすふるさと)』で、嵐に遭い漂流船の中で頭を打ち、思考はゆっくり、表情もうつろな水主(かこ)の小市の、予見できぬ人生の不運を好演。『ワンピース』の監獄署長マゼランでの黒革に身を包んだ痛快な敵役も、やるじゃないかと感心させたが、新作の好対照な役を見事に演じたわけだ。2008(平成20)年7月、泉鏡花の『高野聖』で富山の薬売に山越えの道を教える猟師の役の解釈も鋭く、その時は主演・演出の坂東玉三郎の影響かと受け流したのは私の誤りであった。古典はどうか。父の市川左團次の得意芸を継ぎ、『暫』や『女暫』の腹出しの成田五郎がいい。大きさ、貫録がつき、板鬢の鬘、赤っ面が似合ってきた。初代左團次も演じた『助六』の朝顔仙平の軽妙洒脱な男伊達もこなせば、どんな役も怖いものなしだ。心身の老いを知らぬ時代だが、古典、新作のあるべきかたちを見据えて役者像を練ってほしい。

〔朝田富次〕

経歴

芸歴

▼1967年10月9日生まれ。市川左團次の長男。73年1月歌舞伎座『酒屋』の娘おつうで初お目見得。74年2月歌舞伎座『燈台鬼』の少年時代の道麻呂ほかで六代目市川男寅を名のり初舞台。2003年5月歌舞伎座『暫』の成田五郎ほかで六代目市川男女蔵を襲名。

受賞

▼1973年3月『恋女房染分手綱』の由留木家息女調姫で国立劇場奨励賞。76年1月『蘭平物狂』の一子繁蔵で国立劇場特別賞。2005年重要無形文化財(総合認定)に認定され、伝統歌舞伎保存会会員となる。

舞台写真