▼立役。堂々たる押し出しの体躯に大きな眼。芸容が大きく、色気がある。『助六』の意休や『御所五郎蔵』の土右衛門など、主役に匹敵する敵役の大役で、独自の芸域を確立している。『勧進帳』の常陸坊のような老け役も、『河内山』の高木小左衛門や『魚屋宗五郎』の浦戸十左衛門などの実事も過不足なく演じて、芝居全体を引き締める。『三人吉三廓初買』の土左衛門伝吉では、江戸の闇にうごめく小悪党が老いて因果のおそろしさにおののくさまをリアルに演じて、感動的だった。荒事、実事、老け役、さらには道化役まで、芸域が広い。近年その演技にいぶし銀のような滋味を深めつつある。
▼昭和15年11月12日生まれ。三代目市川左團次の長男。22年5月東京劇場『寺子屋』の菅秀才で五代目市川男寅を名のり初舞台。37年2月歌舞伎座『曽我の石段』の八幡三郎などで五代目市川男女蔵を襲名。54年2月歌舞伎座『京人形』の左甚五郎(ひだりじんごろう)、『毛抜』の粂寺弾正(くめでらだんじょう)で四代目市川左團次を襲名。
▼平成4年6月、5年11月、8年11月に松竹会長賞。9年に松尾芸能賞優秀賞。10年眞山青果賞特別賞。著書『俺が噂の左團次だ』(平成6年、新潮社)。



