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海老蔵が意気込みを披露~1月新橋演舞場「初春歌舞伎公演」


 来年正月の新橋演舞場は、市川海老蔵が昼夜併せた全ての演目に出演する「 初春歌舞伎公演」。公演に先だち取材会が行われ、市川海老蔵が意気込みを語りました。

【市川海老蔵】
 Aプロの『静法楽舞』について。九代目市川團十郎という方は、活歴物に大変重きをおいて歌舞伎に取り組んだ時代がありました。新歌舞伎十八番というものを制定したのも九代目です。その中で、近年、新歌舞伎十八番は『鏡獅子』ですとか『素襖落』、『紅葉狩』や『高時』など、上演されているものが七、八演目ぐらいしかございません。実は歌舞伎十八番は十八演目ですが、新歌舞伎十八番は四十演目以上あります。上演されていないものも結構ありまして、その中で今回の『静法楽舞』という演目は九代目が勤めた折にはあまり評判が良くありませんでした。ですが、九代目が創ったものということで、評判が良くなかったものにメスを入れるということが我々後続の先人に対しての敬意の表し方の一つではないかなと思っています。ほぼ資料のない『静法楽舞』が、今後、私の時代ではなく後続達に何かヒントになるものを残せるようにという発想の中で、また九代目に対して敬意をもってできる演目ということで選ばせていただきました。九代目が勤めた時は静御前しか出てきませんが、私が七役を演じることで多くの登場人物を見てもらって、お正月からお客様に楽しんでいただきたいという趣向です。
 また、この演目で一番注目すべき点は、歌舞伎史上初めての「音楽の五重奏」というところです。『紅葉狩』ですら三重奏ですが、それ以上に重なったものは今までございません。今回は河東節、常磐津、清元、竹本、長唄囃子と五つの音楽が一つの舞台の、一つの演目で合唱するということは歌舞伎史上初めてのことでございます。

 Bプロの通し狂言『日本むかし話』では、娘の麗禾が幼少のかぐや姫役で出演いたします。セリフは稽古という形ではなく、私が娘の前でボソボソとかぐや姫のセリフを言って、気になり始めたらいろいろと教えるという形をとっています。それで覚えました。踊りも私が先に覚えて、娘にそれを見せて、ほかの舞踊家の方にお願いしてお稽古をしていただいているところです。勸玄も麗禾も、うちの子達は出たがりなので、楽しくお稽古しているみたいです。
 内容は、演出の宮本亜門さんと初めて会った時にすべての話をしていて、「ABKAI」では一気にできなかったので今回通しで上演させていただきます。また、一寸法師は通し狂言にある道行みたいなもので、舞踊の一場面で一寸法師を表現したいと思っており、天王寺屋のおじ様(五代目中村富十郎)のご子息、中村鷹之資さんにお願いしました。私も今年で40歳なので後続のことを考えなければいけない年頃なので、そういうことも考えていきたいと思います。

 私の中では竜宮物語(浦島太郎)も、桃太郎も、花咲爺さんも、一寸法師も、かぐや姫もロマンの話になりますが、これは日本昔話というだけではなく、もしかすると地球外生命体達の話ではないかな、と思っています。そういうものを見た人達、日本人の発想力の豊かさがこの日本昔話を創ったとも考えるのではないでしょうか。日本の妖怪とか、海外のものもそうですが、もとをただせば何かがあるはずです。花咲爺さんだとタイムスリップを連想しますし、浦島太郎は時差ですよね。桃太郎の鬼は実は外国人で、当時大きな外国人と日本人の話ではないかと思います。かぐや姫は、まさに月に帰るところを誰か見た人がいて、それを書いた人がいるのではないかと・・・もしかすると、昔話というのは造られたのではないのではないかという気が、ずいぶん前からしておりまして、自分の中にグッと秘めていました。
 そこで今回、昔話という、どなたでも知っているものをテーマにして歌舞伎をしてみたいと考えました。古典歌舞伎も大切ですが、面白い新しい歌舞伎をするのが我々の世代の共通認識だと思います。そこで、長い時間をかけて語り継がれてきたお話を、今回繋げてみたいなと思いました。お正月、大人には気軽に楽しめるお芝居ですし、個人的にはお子様達にも観ていただければいいなと思います。

 また、Aプロの序幕の『天竺徳兵衛』では足利義政役で出演します。足利義政というと、父(十二代目市川團十郎)が大河ドラマで演じた、銀閣寺を造った人です。Aプロ、Bプロ、すべての演目に出演させていただき、“頑張ります”という感じですね(笑)。