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正月の初芝居「新春浅草歌舞伎」!出演者が舞台への思いを披露


 浅草のお正月恒例「 新春浅草歌舞伎」が来年も浅草公会堂で開催されます。
 平成27年に尾上松也を中心にメンバーを一新した新春浅草歌舞伎。平成30年の正月も松也をはじめ、中村歌昇坂東巳之助坂東新悟中村種之助中村米吉中村隼人中村梅丸ら若手花形俳優がエネルギー漲る熱い舞台をお届けします。そして今回も中村錦之助が若手を束ねて舞台を引き締めます。公演に先立ち製作発表記者会見が行われ、出演者が舞台への思いを語りました。

【尾上松也】
 新春浅草歌舞伎が我々の世代になって、4年目となります。今、私たちがこうして浅草歌舞伎をさせていただけるのは、先輩方のご苦労の賜物だということを改めて実感しています。浅草歌舞伎というのは、浅草の皆様と共に成長をしてきましたし、私達もこの浅草歌舞伎が一つの目標となり、1年の大きな糧となってきました。
 初年度はがむしゃらに突き進んだ感じがしました。本当に嵐のように一ヶ月が過ぎていきました。4年目となりまして、初年度のメンバーも戻ってきてくれまして、舞台も華やかになると期待しております。まだまだ未熟ではございますが、錦之助のお兄さんのお力もお借りして良い舞台を勤めたいと思っております。

 若手の公演というのは、それだけではいけないのですが、無我夢中に芸に対して向かっていく姿勢、若い年代のこの時しか見られない良さがあると思います。大きな役を演じる役者のほとんどが初役で勤めているというのは、この浅草歌舞伎でしか見られないと思います。私達はまだまだ修業の身でございます。お役に対してとにかく必死に、先輩方がご指導くださったことを具現化できるようにするということが一番大変なことだと感じています。
 浅草歌舞伎の特有なことといえば、やはり自分達の責任公演というところでしょうか。まだまだ先輩方の胸を借りて出させていただく場を頂戴していることが多いですが、この公演なると思うのが、責任を持って勤めなければいけない場面が多いということです。お客様にお金を払って観ていただくことのありがたさというものを、この公演でより実感できますし、それは芸とはまた違う部分で勉強になるところです。初演の時、それが一番の怖さでした。その気持ちは、今でも忘れないようにしようと思います。

 昼の部は『御浜御殿』の綱豊卿、夜は『引窓』の濡髪をさせていただきます。二役とも、初役でさせていただきます。『御浜御殿』は忠臣蔵という歌舞伎にとってはかけがえのない物語が軸となっています。綱豊卿は(片岡)仁左衛門のお兄さんにご指導いただきます。勘解由とのセリフのやり取り、助右衛門との探り合いが一つの眼目となってくると思います。自分の持っている力を存分に出して、勘解由の錦之助さんの胸をお借りして、助右衛門との時は巳之助君と真っ向勝負でぶつかり合えるようなところまで持っていけるといいなと思います。浮き沈みのある気持ちの流れをきっちりお見せして、思いが伝わるよう勤めたいです。
 『引窓』は自主公演で南方十次兵衛をさせていただきました。今年の浅草歌舞伎では錦之助のお兄さんと『角力場』をさせていただき、一年越しにその後の話を上演するということになりました。こういった大役を、初めて(中村)吉右衛門のお兄さんにご指導いただけることは非常に光栄だと思っています。


【中村歌昇】
 3年振りに新春浅草歌舞伎に出演できることを凄く喜んでおりますし、その間、出演してくれていたメンバーが土台を作ってくれたと思っております。一同で頑張って良い舞台を作っていければいいなと思っています。
 浅草歌舞伎は、浅草のお力添えで成り立っております。今回も皆様と協力をしながら、浅草で盛り上がっていければと思います。

 『引窓』の南方十次兵衛を初役で勤めさせていただきます。播磨屋にとってとても大切な作品の一つだと思っています。義理と人情、親子の情愛をやさしく繊細に描いた作品です。観終わった後に、心がほっとするようなところもあり、涙してもらうようなところもある、切なくも暖かいお話で、皆さんに楽しんでいただけると思います。吉右衛門のおじ様から教わります。毎回お世話になっていますが、教わったことを一つ一つ、少しでも舞台の上で出せるように勤めていければいいなと思っております。


【坂東巳之助】
 今回は、最初の年に一緒にやったみんなが戻ってきてくれまして、このメンバーでまた新春浅草歌舞伎を作ることができるということを、とても嬉しく、そして本当に楽しみにしています。みんな仲が良いのはもちろんですが、舞台の上では切磋琢磨しつつ、せっかくですから新年の華やかな浅草の街を楽しむような時間があっても良いのかなと思っています。

 ここ2年ほど松也のお兄さんとちゃんと共演をしたことがないですねと話をしていたら、今年『棒しばり』を一緒にさせていただくことができました。そして来年は『御浜御殿』で、松也兄さんの綱豊卿で私が富森助右衛門をさせていただきます。これは会話劇でございますので、お客様に退屈させないようにしなければならない、非常に動きの少ない演目でございます。お兄さんとお互いに芝居を、気持ちをぶつけ合って、会話劇の中にある面白さを、きちんと自分の中で理解をした上で勤めないといけないと思っています。会話劇というのは感じるままではなく、感情の動きをきちんと理解した上で演じないと中々成立しませんので、お兄さんとお芝居を作り込んでお客様に楽しんでいただける舞台になればと考えております。
 『京人形』は父(十代目坂東三津五郎)も度々勤めておりました舞踊の演目でございます。第二部では種之助君の『操り三番叟』がございますので、人形で始まって人形で終わりますが、こちらの人形は新悟君が勤めてくださいます。楽しい踊りですので、こちらはお客様にも何も考えずに楽しんでいただけるように勤められればと思っています。お正月らしく華やかな気持ちで浅草の街に繰り出していただき、浅草を楽しんでお帰りいただけるような舞台になればと思っております。
 また、『鳥居前』の逸見藤太と『引窓』の平岡丹平も初役です。こういった役もきちんと勤めて、仲間たちの支えになれてこその浅草歌舞伎だと思いますので、すべてあわせて力を出し切れるように勤められればと思っています。


【坂東新悟】
 2年振りに出演させていただきます。この浅草歌舞伎は、先輩方が本当に大切にされてきた公演です。その先輩方の思いを無駄にしないように、一生懸命勤めさせていただききたいと思っております。また、浅草の方々の期待を裏切らないように、私達はお芝居で街に還元していけるようにしたいと思います。

 第一部では『御浜御殿』の江島と、第二部で『京人形』の京人形の精を勤めさせていただきます。江島については、米吉さん演じるお喜世の上司のような役どころです。仕事ができるだけでなく、情もあり、人間味もあり、それでいてお茶目なところもある、非常に難しい役どころでございます。まだまだ私のような若輩者に勤められるお役ではないですが、(中村)時蔵のおじ様に教えていただいて、精一杯、舞台の上で存在感を出していきたいと思います。
 『京人形』は人形に心が宿るという趣向の踊りでございますので、最初のうちは甚五郎の心を反映した男性の動きで、後半は女性らしい動きとその変化を楽しんでいただいて、お客様に明るい気持ちで帰っていただきたいと思います。


【中村種之助】
 久々に浅草歌舞伎に出させていただけること、皆さんと一緒に舞台に立たせていただけること、本当にありがたく思っております。前回出させていただいたのはちょうど世代交代の時で、みんなで切磋琢磨して一緒に頑張っていこうという気持ちで勤めていました。今回は私たちが出ていない間、浅草歌舞伎を守ってくれた松也兄さん達のもとに戻るということで、新たに、その時とは違う“挑戦する”という気持ちで一月勤めたいと思っています。

 序幕に『鳥居前』の義経で出させていただきます。日本人なら誰でも知っているような人物で、歌舞伎にとっても大切な役柄だと思っております。『義経千本桜』は義経を取り巻く人々の話で、『鳥居前』においては義経はお芝居の心を表す役柄だと思います。そういうところを大事に勤めたいと思います。
 『操り三番叟』は上から糸で操られている人形です。そういう趣向を感じていただけるように、日本舞踊の大らかさを正月らしく華やかに勤めたいと思っております。『京人形』のおとくは、とても心の大きな女性です。人形に惚れている旦那さんを許してしまうわけですから。そこを大切に勤められればと思います。


【中村米吉】
 2年振りに浅草歌舞伎に出させていただきます。本当に嬉しく思っております。浅草歌舞伎ということで、みんな大きなお役に挑戦させていただきます。ご指導くださいます先輩方の教えを大切に勤めることはもちろんですが、この機会を楽しみながら一月を終えられたらなと思っております。

 第一部の『御浜御殿』でお喜世という大きなお役をさせていただきます。真山青果の書きました新歌舞伎といわれるジャンルのお芝居でございます。古典のお芝居とはまた違ったセリフ等が出てきますので、まずはそれを勉強させていただきたいと思います。松也兄さんの綱豊卿が愛する側室でございますので、兄さんに愛されるお喜世を勤められればと思っております。
 『引窓』はお早という大きなお役で、播磨屋一門にとりましても大切なお芝居でございます。本当に素敵な物語でお芝居です。こちらは歌昇兄さんの奥さんという役ですので、おこがましくもありますが兄さんを支えられる奥さんを演じられたらと思っております。



【中村隼人】
 錚々たる先輩が通ってきた浅草の舞台に立たせていただけること、本当に幸せに思っております。浅草という街は、新年はより活気づいてとても熱い街になります。その熱さに負けないように、我々一丸となって、一致団結して舞台を勤めていきたいと思っております。

 第一部は『鳥居前』の佐藤忠信実は源九郎狐という役を勤めさせていただきます。『義経千本桜』は歌舞伎の中でも由緒のある演目です。今回は種之助君の義経で、私自身も初役でこの大役を勤めさせていただきます。江戸歌舞伎を代表する荒事というのは、大らかさ、勢い、太さ、丸さが必要な役どころだと思っております。憧れていた役を、(尾上)松緑兄さんに教えていただいて勤めさせていただきます。自分の新しい境地を、挑戦する気持ちと作品へのリスペクトを忘れずに勤めさせていただきたいと思います。
 第二部でも種之助君の『操り三番叟』で千歳、『引窓』では三原伝造という役をさせていただきます。第二部は皆さんが主演の舞台に少しでも華を添えられるように、舞台を締められるようにしっかりと勤めていきたいと思います。



【中村梅丸】
 私は来年で6年連続、この新春浅草歌舞伎に出させていただきます。今年からポスターに出していただいたり、お年玉ご挨拶に出させていただいたりと、いろいろと勉強をさせていただいております。この歴史ある公演に出させていただけることは、本当にありがたく、また来年させていただく三つのお役はすべて一緒に出演される先輩方がなさっていますので、一月の間に皆様から教わりながら、少しでも成長できる実りある公演になればと思っております。

 第一部で『鳥居前』の静御前、第二部では『操り三番叟』の後見、『京人形』の井筒姫という役を、すべて初役で勤めさせていただきます。『鳥居前』の静御前は先輩方も非常に難しいとおっしゃいます。(中村)魁春旦那に教えていただいてしっかりと勤めたいと思っております。


【中村錦之助】
 3年連続で出演させていただきますが、私もまだ20代のつもりで勤めていきたいと思っております。また、来年の正月は歌舞伎座では高麗屋(松本幸四郎)のお兄様達の三代同時襲名、国立劇場では音羽屋(尾上菊五郎)のお兄様、菊五郎劇団での復活狂言、新橋演舞場では(市川)海老蔵さんが面白い趣向のお芝居を創っております。浅草も、それに負けないくらい活気のある若手達でお芝居を作っていきたいと思っております。
 今回の演目はこの若手達が、将来、自分達の本役とするような役ばかりでございます。教えてくださる先輩の方々も、自分達が先人から教わった歌舞伎の芸を後進に伝えるため、命懸けでご指導してくださいます。みんなここで技術を得て、将来歌舞伎のために、次は自分達がこの芸を後進に伝えていけるように精進して、将来的には正月にはそれぞれが座頭となれるように修業していってもらいたいです。それに少しでも力添えができるように、私も精一杯頑張るつもりでございます。

 私も若手の時には浅草歌舞伎に出させていただきました。浅草は、大変活気がある街、人情もあり江戸っ子気質、そして街をあげて応援してくださるのは大変ありがたいことです。昔の芝居小屋は繁華街にあって、浅草は同じような雰囲気で、浅草寺さんにお参りしたり、仲見世でお買い物をしたり、それらが一緒になって芝居見物をするという街です。お芝居を観る方もみんなウキウキして来ますし、劇場の大きさも含めて若手にはちょうど良いのが浅草歌舞伎だと思います。若手の時は、小さめの劇場でお客様との親近感やコミュニケーションをとり、年と共に劇場も大きく、それにも増して自分の芸も大きくなっていくものだと思います。観る方全員を魅了できるように勤めることは、大変勉強になります。私自身も一生懸命、それを心がけて勤めたいと思っています。