Home > トピックス一覧 > 「京の年中行事 當る戌歳 吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎」取材会が行われました

トピックス

「京の年中行事 當る戌歳 吉例顔見世興行 東西合同大歌舞伎」取材会が行われました

 京都の冬の風物詩、恒例の南座「吉例顔見世興行」。今年は会場をロームシアター京都メインホールに代えて開催します。中村橋之助改め八代目中村芝翫襲名披露、中村国生改め四代目中村橋之助・中村宗生改め三代目中村福之助・中村宜生改め四代目中村歌之助襲名披露に、東西の幹部俳優が揃い、襲名披露興行を飾るにふさわしく豪華に華を添えます。
 11月12日(日)に京都で取材会が行われ、中村芝翫中村橋之助中村福之助中村歌之助が「 當る戌歳 吉例顔見世興行」に向けての意気込みを語りました。

【中村芝翫】
 昨年から始まりました親子四人での襲名披露興行、10月・11月に歌舞伎座で、そして本年1月に大阪松竹座、6月に博多座、7月・9月には地方公演をさせていただきました。まだ金丸座と中央コースという地方公演が残っておりますが、大きな一座では最後となる襲名披露興行を「顔見世興行」におきまして勤めさせていただけること、本当に感謝申し上げます。

 京都南座は今、耐震の為の工事をしておりまして、昨年は中村雀右衛門のお兄さんが先斗町の歌舞練場で「顔見世興行」をいたしました。子供の時から南座には父(七代目中村芝翫)が「顔見世興行」に出るたびに連れて行ってもらいました。よく父に手をつながれて、河原を歩いて南座の前に行って「いつか良い役者に、ひとかどの役者になれるように勉強努力をするんだよ」と言われてきました。そういった思い出の深い劇場です。
 「顔見世興行」というのは戦争中やいろいろな苦難の折にも回を重ね、それでも南座の正面にまねきを掲げ続けたというのが東西の歌舞伎役者の誇りになっています。芝翫襲名が南座でできないのはちょっと寂しいですけれども、だからこそ、耐震工事中でも芝翫襲名と顔見世を京都でやる、という強い思いを抱いております。
 また、いつもは南座にまねきを掲げておりましたが、今回は南座ではなく会場のロームシアター京都に掲げることになりました。これは顔見世の長い歴史の中で新しいことでございます。

 興行におきましては、昼は『義経千本桜 渡海屋・大物浦』の知盛を勤めさせていただきます。夜の部は『人情噺文七元結』の左官長兵衛をやらせていただきます。
 襲名を通して先輩方が凄く手をお貸しくださいました。芝翫を襲名してから諸先輩方と相対するようになって、役者として何か認識してくださったような、皆さま父親代わりのようにいろいろと本当に一字一句教えていただきました。ああ、ここはこうしているんだ、こういうところに苦労をなさっているんだ、こういう言葉の使い方をするんだと、いろいろなテクニックを山ほど教わりました。襲名披露興行の中で先輩方と出させていただいたことは、これはもう大変な財産です。

 私共の襲名披露興行は、家族型の襲名だといわれています。父のご贔屓から子供達のファンまで、観ていただくお客様も家族型ですし、出演する私達も家族型なんですね。ですから今度のロームシアターでの公演は本当に一番良い形だと思いますし、是非、親子で足を運んでいただきたいと思います。


【中村橋之助】
 顔見世は国生の時に二度出させていただいて、今回が三回目になります。最初に顔見世に出た時、自分の名前がまねきに上がったのを見て、もの凄く嬉しかった思い出があります。今回は橋之助としてロームシアターにまねきが上がるということですが、僕だけではなく橋之助、福之助、歌之助の三人一緒にまねきが上がるということがとても嬉しいです。

 昼の部では『寿曽我対面』の五郎と、夜の部では『俄獅子』の鳶頭と、『大江山酒呑童子』の保昌を勤めさせていただきます。今まで、いろいろなお役を勉強させていただいておりましたが、今回の襲名では一本筋の通った、立役として目指したい方向性のお役ばかり勤めさせていただきます。お客様に、こういう路線の“新しい橋之助”を見てみたいなと思っていただけるように、この興行を機に一生懸命勤めたいと思います。

 襲名で勤めたお役の中では、6月の博多座で演じた『車引』の梅王丸が特に印象に残っています。梅王丸というのは小さい頃からずっと勤めたかったお役で、また『車引』は家の中でも三人でよくやっていた演目です。それを福之助と、桜と梅でさせてもらったというのは凄く嬉しかったです。それから、研修発表会の『熊谷陣屋』で片岡仁左衛門のおじ様、『車引』で中村吉右衛門のおじ様、このお二人にお稽古をしていただいたことが、自分の人生で一番といってもいいぐらい嬉しいことでもあり財産です。


【中村福之助】
 襲名披露興行が始まって一年が経ちました。この一年は、いろいろと教えていただいた濃い一年でした。この12月は、昼の部の序幕『寿曽我対面』で近江小藤太をさせていただきます。『対面』というお芝居は歌舞伎の教科書といわれるお芝居です。『対面』に出させていただくこと自体が初めてで、先輩方の雰囲気や息遣いを間近で見ることの出来るチャンスなので、いろいろなものを吸収したいと思います。

 夜の部の『俄獅子』では、(中村)時蔵のおじ様、(片岡)孝太郎のおじ様の胸をお貸りできること、また兄弟三人で出させていただけることがとても嬉しく思っております。最後の『大江山酒呑童子』では女方を勤めさせていただきます。将来的には立役で考えていますが、父も若い時は女方をやっていたと聞いたので、これも経験だと思っていろいろ教えていただきながら勤めたいと思います。また、京都は初めて出させていただくので、不安な気持ちもありますが、精一杯勤めさせていただきます。

 襲名ではいろいろな大きなお役を初役でやらせていただきました。何年後か、大人になるにつれてもう一度やらせていただく時に、前回を超えられるようにちょっとずつでも進歩できたらいいなと思います。今年の6月に博多座で『車引』の桜丸をやらせていただいた時に、舞台で梅王の兄(橋之助)と切株のところで話している場面が、何か不思議な感じがしました。それが凄く印象に残っています。


【中村歌之助】
 昨年10・11月から襲名披露をさせていただいて、その時は京都の顔見世はまだ先かなと思っていましたが、こんなにも早く襲名という一年が終わってしまうのだなと思うと寂しい反面、本当にこの一年凄い勉強をさせていただいたなと思っております。
 小さい頃から顔見世に出演している父を観に行ったりしていたので、その憧れの舞台である顔見世で襲名披露ができるということは凄く嬉しく思います。

 昼には『寿曽我対面』、夜には『俄獅子』『大江山酒呑童子』とたくさんの大役をいただきました。夜には、6月に続き二回目の女方を勤めさせていただきます。前は役に慣れるということしかできなかったのですが、もうひとつプラスして(中村)壱太郎のお兄さんに教えをいただきながら、一生懸命、勉強をして頑張りたいと思います。

 襲名で勤めさせていただいたお役は、全てがすべて初めてのお役でとても思い出深いです。特に昨年11月歌舞伎座で一人で踊らせていただいた『芝翫奴』は、舞台に出るまでは凄く緊張して、大丈夫かなという感じでしたが、憧れの歌舞伎座で、舞台に立っているのが自分一人というのが嬉しくて。お客様も自分しか見ていないという状況で踊れるということが凄く嬉しかったです。本当なら一ヶ月やりたかったです。