Home > トピックス一覧 > 勘九郎、七之助が思いを語りました~6月名古屋平成中村座

トピックス

勘九郎、七之助が思いを語りました~6月名古屋平成中村座


 本年6月名古屋で 「名古屋平成中村座」(6月1日~26日)が開催されます。
 十八代目中村勘三郎(当時勘九郎)が長年抱いていた夢を、平成12年に具現化させた平成中村座。東京・浅草からスタートした公演は、大阪、名古屋をはじめとする国内はもちろん、ニューヨークやベルリンなどの海外でも開催されてきました。名古屋では過去2回開催されており、今回は8年振りの公演となりとます。会場は前回と同じ名古屋城内二之丸広場です。
 3月1日(水)に都内で製作発表が行われ、中村勘九郎中村七之助が意気込みを語りました。

【中村勘九郎】
 名古屋は中村屋発祥といいますか初代中村勘三郎の出身地ということで、そのご縁もあります。また、祖父(十七代目中村勘三郎)が御園座に出ておりますと良い役をもらっていた、名古屋に育てられたと言っておりました地でございます。今回、名古屋城に中村座を建てることができて本当に嬉しいです。前回は8年前ですか。何か、遠い昔のような、つい最近のような気がしますけれども、今回は新しい仲間達も加わりますので、力を合わせて良い芝居を皆様に届けたいと思います。

 『対面』は去年の3月に(中村)雀右衛門さんの襲名に出させていただいた時に、萬屋の兄弟(中村梅枝萬太郎)で『対面』を見たいなと思いました。二人にも話をしていまして、今回それが実現できたというのは嬉しいです。平成中村座のモットーというか、父のモットーで「全員が出る」というのを昼の部の序幕からやらせていただくのはとても嬉しいです。みんなで顔を揃えて幕を開けることができるというのも嬉しいですね。
 『封印切』は、休めるかなと思ったら八右衛門で、その後『お祭り』で出ずっぱりです。死なないように頑張ります。『お祭り』はこの間、祖父の追善舞踊会で御園座で踊らせていただきました。やはり、難しい踊りだなということを凄く思いました。踊りですけど、踊りではない。体内から醸し出す空気というのは、祖父の映像や父の映像もそうですけど、見ていて歌舞伎の面白さというか死ぬまで勉強というのはこういうことだなと思いました。体がピークでも心が追い付いてなかったり、心がピークの時には体が追い付かなかったりと、この『お祭り』に関しては本当にどこが最頂点かというのが難しい演目です。魂が宿っていると信じて小屋のパワーをもらって勤めたいと思います。
 『四ノ切』は(中村)扇雀さんの忠信が見たいと思ってお願いしました。『仇ゆめ』は最後の桜の場面が、夜の空間と幻想的な画になればいいなと思います。

 平成中村座ならではの、舞台の奥を開けて劇場の背景を見せる演出については、最初は『仇ゆめ』だけでと思っておりました。そうすると昼のお客様に申し訳ないので、父が『お祭り』でスカイツリーをバックに開けたやり方があるので・・・昼夜両方とも開けられる演目があるのでやりたいと思います。室内の空間から開かれた時の感動というのは中々味わうことができないので、劇空間として楽しんでいただけたらいいなと思います。

 今回も試演会をやりたいと思います。やはり平成中村座では恒例なので、どこか一回公演の日でできればと思います。父がやりたいとずっと言っていたことですし、この試演会があって昨年12月の(『寺子屋』の)松王も出来たようなものなんです。というのも、父が試演会の時に、松王役の俳優に教えていたのを見ていました。型というのは、その人に教えてもらわなければわからないことなので、この場面はそういう気持ちでやっていたのかとか、形だったりセリフ廻しだったりというのを見て覚えていました。でも、心の内というのは教わらないとわからないことなので。まあ、何をやるのかはお楽しみということで。


【中村七之助】
 中村屋にとって大切な地である名古屋で公演をさせていただけることを本当に嬉しく思います。父が亡くなってから東京と大阪でやった平成中村座公演の演目では、父が演じていない演目が多かったんですが、今回の演目を見ますと『対面』の五郎は父が若かりし頃にとても評判を得た演目で、他を見ても既に父が得意とするというか、当たり役といっても過言ではない演目が並んでいます。こういう演目立ては名古屋が初めてではないかと思います。それを気負わず、でも魂は引き継ぎ、一生懸命に名古屋のお客様のために演じたいと思います。また、来年、御園座が新しくこけら落としになりますので、名古屋の皆様の起爆剤となれるような公演にしたいとも思っております。

 やはり名古屋のお客様はとても中村屋の人達に温かいですよね。昔、若いころの舞踊公演で、花道から牛若丸で出て振り返った時に2階3階のお客様がワーッと拍手してくださったのを今もハッキリと憶えておりまして、なんて温かいお客様だろうと思いました。名古屋では一日だけの公演はありましたが、一か月間やらせていただけるのは久しぶりです。今まで行けなかったフラストレーションを全部ぶつけて挑みたいと思います。

 『封印切』の梅川は女方の中では一番演じています。自分の人生の中で5回目ですね。全員旦那が違いますけど・・・。扇雀さんとは2回目で、他は兄、父、(市川)猿之助さんです。
 『弁天』はずっと女方ばかりしていましたので、久しぶりに肌を露出するのが恥ずかしいです。ちょっと肉付きも良くなってきたので、ガリガリだった頃よりも色気が出るのではないかなと思います。父の映像も見返したりしながら、弁天も3回目になりますので、気持ちよく自分なりの弁天小僧をやれたらいいなと思います。(片岡)亀蔵さんの南郷でやるのは初めてです。お兄さんの市蔵さんとは初役の時にやらせていただいています。亀蔵さんとは同じ弟、次男同士なので、いろいろと話し合って二人ならではのものにしたいと思います。
 『仇ゆめ』は名古屋で、父の狸で深雪を初演でやらせていただきました。稽古の時に死ぬほど怒られて・・・でも千穐楽の日に呼ばれて「良かったよ」と言ってくれたのは本当に嬉しかったですね。最後の場面の時に、父の目がどんどん変わっていくのが相手役をやっているとわかるんです。父は温かいようで、芝居に関しては凄く冷たい人なので、ダメだと目も見てくれません。それが、段々と回を重ねるごとに目を見てくれて、最後の方には目をウルウルしてくれました。僕も、もちろん泣いたりしていたんですが、それが、父が名古屋で立つ最後の舞台になりました。その『仇ゆめ』を、魂を受け継いだ兄と共にやらせていただけるというのは、今回の公演の中で一番思い入れの強い感慨深いものになるのではないかと思います。