Home > トピックス一覧 > 3月国立劇場『通し狂言 伊賀越道中双六』出演者が思いを語りました

トピックス

3月国立劇場『通し狂言 伊賀越道中双六』出演者が思いを語りました


国立劇場3月歌舞伎公演は『通し狂言 伊賀越道中双六』の上演です。
平成26年12月に国立劇場で上演され、劇界の話題を集めた「岡崎」の再演!さらに86年振りの「円覚寺」の復活など、台本や演出を新たに練り上げた、国立劇場開場50周年記念の掉尾を飾る話題の舞台です。
公演に先駆け出演者が思いを語りました。

中村吉右衛門
 唐木政右衛門を勤めさせていただきます。前回が平成26年でございまして、あっというまに足かけ3年もたってしまって・・・大変評価をいただいたものですから、昨日のように思っておりましたら、月日の経つのは早いなとつくづく感じております。
 今年の1月には歌舞伎座で『伊賀越道中双六』の一場面の「沼津」を、歌六さん、雀右衛門さん、又五郎さんとやらせていただいて、なにか気持ちが今も繋がっているようで、演じる側の気持としても、とても良いものではないかなと思っております。

 「仇討ち」というものは、今はもちろん法律的にも禁止されていまして、そういうことはございませんが、それに似た気持ち、人間の心の中に恨みを晴らしたいという気持ちは、いつの世にもきっとあると思いますし、そういうところが上手く書けている作品です。最後に仇討ちということで、気持ちを晴らしてくれる、涙しながらも、すっきりとするというところなど、本当に良く書けた戯曲だと思います。

 私も吉右衛門を襲名して50年。同じく開場50周年を迎えた国立劇場と吉右衛門は一緒に歌舞伎をやってきたんだなと、深い縁を感じております。


中村東蔵
 幸兵衛女房おつやを勤めます。評判になった作品というのは、その時観て下さったお客様が「また観たい」と思って来るでしょうし、初めての方は「どんな舞台になるかな」と期待して来ると思いますので、責任もありますし、かえって大変ではありますが、期待に添えたらいいなと思っております。また、同じメンバーに選んでいただき本当にありがとうございます。

 国立劇場が50周年ということで、開場の頃は、まだ結婚したばかりだなと思い出します。いろんな事がありましたが、やはり国立劇場というと、若い頃の私たちにとっては、大きな役をさせてもらう貴重な劇場でございましたし、随分様々なお役をさせていただいた事を覚えております。


中村歌六
 山田幸兵衛を勤めさせていただきます。国立劇場開場50周年記念公演の最後、締めくくりの作品となりますよう、一所懸命がんばって勤めたいと思います。
 前回は、44年ぶり、戦後3回目の上演でしたから、失敗したらこのお芝居はずっとお蔵入りになってしまうという気持ちで大きなプレッシャーがありましたが、今回も前回の評判があっての再演ということで、それに応えなくてはならないという、また違ったプレッシャーをヒシヒシと感じております。

 前回の「岡崎」の復活では、幸兵衛の手がかりになるものもほとんど無く、文楽の義太夫を聴いたり、古い写真を見ながら自分で組み立てて行く必要がありました。それは苦労でもあり面白みでもあったような気がします。難役といわれる役ほど、楽しめたらいいなと思っています。



前回 平成26年12月公演の舞台より


中村雀右衛門
 政右衛門女房お谷を勤めます。前回のときは、まだ芝雀でございましたが、今回は雀右衛門と名前が変わりまして、よりいっそう精一杯勤めさせていただきたいと思います。

 お谷は、非常に哀れな女性ではありますけれど、やはり思っていることは子供のことであったり、いくら離縁状を突きつけられても夫のことであったり、また、父親に対する仇討ちという思いも強く持っているのではないでしょうか。そういった意味では、哀れではあるけれど、気持ち的には強い女性で、そのため、どんな艱難辛苦も乗り越えていけるのだろうと思っています。
 そういう現実にはあり得ないようなことであっても、それが人の心情としてお客様に伝わるように、勤めていきたいと考えております。


中村又五郎
 佐々木丹右衛門と奴助平を勤めさせていただきます。この作品で一番の悪人は「沢井股五郎」ですが、私は「良い又五郎」でございます。この50周年記念の締めくくりに出演させていただきますことを、ありがたく思っております。

 50年前の開場記念公演『菅原伝授手習鑑』では「寺子屋」の小太郎を勤めさせていただきました。当時、子供心に、「廊下も広いし、大きくて綺麗な劇場だな」と思いながら、毎日国立劇場に通った覚えがあります。今とは違って、隣には最高裁判所もなく・・・原っぱでしたね(笑)。
 国立劇場では勉強会を開いたり、歌舞伎鑑賞教室では大きなお役を勉強させていただきました。他の興行においても大きなお役を数々やらせていただき、本当にありがたいなと思っております。


中村錦之助
 私が勤めますのは、悪い方の股五郎でございます(笑)。今回は86年ぶりに「円覚寺の場」が復活されまして、この場では、沢井股五郎のより一層卑劣なところが描かれております。その“卑劣さ”に徹する敵役になって、自分が討たれる事で“皆の苦労が報われた”とお客様に思っていただけるような股五郎を創っていきたいと思っています。

 歌六の兄さん、又五郎の兄さんと一緒に、子どもの頃「杉の子会」という勉強芝居に出させていただきました。当時先輩方に教えていただいたことなどは、今もとても参考になっております。大変様々な勉強をさせていただいた、ありがたい50年間でした。


尾上菊之助
 『伊賀越道中双六』の「岡崎」という濃厚なドラマのなかに、また身を置くことができて、すごく幸せです。そして、前回と同様の和田志津馬を勤めることができて嬉しく思っております。
 今回は86年ぶりに上演される「円覚寺の場」から出させていただきますが、これから仇討ちに向かっていく気持ちがより一層克明に創り上げられるのではないかと思っています。

 志津馬という人物が原因で、この仇討ちが始まるのですが、「新関」や“相合傘”(「岡崎」の前半部分)では、恋模様も描かなくてはいけないという責任も担っております。前回同様、米吉さんと相談しながら“色模様”を創り、気持ちも新たに役作りをしていきたいと思っております。