Home > トピックス一覧 > 新春浅草歌舞伎 出演者が意気込みを披露

トピックス

新春浅草歌舞伎 出演者が意気込みを披露


 若手俳優の登竜門、恒例の「 新春浅草歌舞伎」が、今回も正月の浅草公会堂で開催されます。尾上松也坂東巳之助中村壱太郎中村隼人の4人の花形を中村錦之助が率いて、情熱溢れるエネルギッシュな舞台をお届けします。
 公演に先立ち、出演者が製作発表記者会見を行い公演への意気込みを語りました

【尾上松也】
 リニューアルした新春浅草歌舞伎も3年目を迎えまして、初めて出演させていただいた時がついこの間のようです。メンバーも少し代わり、私自身も初役の大役を勤めさせていただくわけですけれども、3年目ということでもう一段階何かステップアップをした舞台をご覧いただけるように準備をしていきたいと思います。

 『角力場』は、本興行で初めての自分の出し物というか、一ヶ月興行の中で初めて芯の役を勤めさせていただいた役です(平成20年のこんぴら歌舞伎)。その時は山崎屋与五郎と放駒長吉の二役をさせていただき、とても思い出に残っている作品です。
 『棒しばり』の次郎冠者は本興行で勤めさせていただくのは初めてですけれども、自主公演で一度勉強させていただいたことがあります。その時は一日二回だけの公演で、あっという間に過ぎてしまった感じがありました。今回は一ヶ月勤めさせていただけるので、とにかくしっかりと踊り込んでお客様に楽しんでいただけるようにしたいです。自分の中でも、体にしっかり入れ直す気持ちで勤めたいと思います。
 『吉野山』の佐藤忠信は初役でございます。浅草歌舞伎でも何度も上演されておりますし、本興行で先輩方の『吉野山』を何度も見せていただいております。やはり『義経千本桜』という通し狂言自体が私達にとりましては、非常に重きを置いている、大切にされている通し狂言です。その中の『吉野山』を演じさせていただくというのは、非常に光栄ですし、やりがいがあると感じております。壱太郎君とも久しぶりに一緒で、踊りを二人でするのは初めてですので非常に楽しみです。『傾城反魂香』を勤めあげた後に場の空気を賑やかにしてくれる、早見藤太をやってくださいます巳之助君との絡みも楽しみです。『吉野山』に関してはお二人に支えてもらいながら勤めたいと思っております。


【坂東巳之助】
 私も3年目のメンバーの一人でございます。今回『傾城反魂香』で浮世又平のお役を勤めさせていただきます。実は、初めて浅草歌舞伎に出させていただいた時(平成20年)の演目が、今の中村勘九郎さんと市川猿之助さんの『傾城反魂香』で、土佐修理之助のお役で出させていただきました。それが浅草歌舞伎としての原点でしたし、大きなお役をさせていただく経験も乏しかった中、ほとんど初めての状態でさせていただきました。原点になった演目を、3年目に浅草歌舞伎でさせていただけるということで、気持ちも新たに一生懸命させていただけたらと思います。
 初めてさせていただいた時に先輩方からたくさんの事を教えていただいたように、今回は修理之助を演じる中村梅丸さんと、先輩後輩という関係も少し意識したいと思います。自分自身もまだまだ若手ですが、どんどん下から新しい世代が出てくるわけで、そういう意味でも少しずつ成長していけたらなと思っています。

 『傾城反魂香』の又平は初役になりますが、物語としてハンディキャップを負った男とそれを支える妻の愛や、それが起こす奇跡という、いつの時代も変わらないテーマでありながらも、凄く古風な作品です。そういう作品の雰囲気、演出というものが非常に歌舞伎らしい部分でもあります。愛という変わらないテーマを、今の若いお客様に受け取っていただくというのが大事なことではないかなと思います。
 『吉野山』の早見藤太も初役でございます。これは明るく出て来て、賑やかに場を盛り上げてお客様にお帰りいただくという三枚目の道化の役です。『傾城反魂香』が最後はハッピーエンドとはいえ重たいお芝居ですので、この二役は自分でばらまいた重たい空気を自分で振り払いに出てくるという関係になるのかなと思います。明るく楽しく勤めさせていただければ良いなと思っております。


【中村壱太郎】
 浅草歌舞伎は3年振りの出演でございまして、6年前から3年間は毎年出させていただいておりました。ずっと先輩達がやってきた舞台を学生の時分に観ていて、憧れの公演でしたので、出させていただいた時は凄く嬉しく、大きな役もたくさん経験させていただきました。『傾城反魂香』のおとくも、『吉野山』も清元でやらせていただくのは初めてで、どちらも初役になります。勉強をして頑張って行くのはもちろんですが、それがしっかりと力となってお客様に伝わって、ドラマとなるように頑張って行きたいと思っております。3年間皆さんが作ってきた雰囲気をしっかりと受け取って、感じ取って、女方としての役を担えたらなと思っております。

 『傾城反魂香』のおとくという役はずっと憧れていた役の一つであります。去年もが四代目中村鴈治郎を襲名します時に襲名狂言として出しまして、その時はおとくを市川猿之助さんが勤めていらっしゃいました。今回は猿之助さんに教えていただこうと思っております。おとくは、夫が言葉を上手くしゃべれない、それを支える女房ということで、しゃべりというかセリフが大きな眼目になってくると思います。歌舞伎では、世話物、時代物という区分をしたりしますけれども、あるところは古典の歌舞伎としての時代的なものがあり、その中でセリフをどう世話にしていくのかというセリフの駆け引きみたいなのが重要であり難しいところで、そのあたりをしっかりと学び、そこに心情をのせてお客様に伝えたいなと思います。
 『吉野山』の静御前は何度かやらせていただいておりますけれども、女武者という強さと、お姫様というたおやかさの出し引きと踊り分けが重要になってくると思います。また今回は清元ということで、曲の持つ雰囲気というのをしっかりとつかんで表現できたらなと思います。



【中村隼人】
 新春浅草歌舞伎は高校2年生の時に初めて出させていただいて(平成24年)、それから毎年大きなお役をさせていただきました。今回四役やらせていただきますが、その中でも『鈴ヶ森』の白井権八という、今まで演じた中で一番大きいお役をやらせていただきます。この演目は新橋演舞場で中村吉右衛門のおじさま、十八代目中村勘三郎のおじさまがなさった舞台(平成24年2月)を見て憧れていた演目でした。リニューアルしてから3年目ですけれども、自分もそのメンバーとして出演できるということは本当にありがたいことだと思っております。勉強会ではないので、しっかりと先輩方に教えていただいて、自分の中に吸収して皆様にお見せできればと思っております。

 昼の部は『傾城反魂香』の狩野雅楽之助という役を勤めさせていただきます。修理之助は二回ほど勤めさせていただきまして、次にステップアップするならこの雅楽之助という役を勤めてみたいなと思っていました。歌舞伎でよくある役どころでしっかりと型のある役で、重たいお芝居の中で少し雰囲気が変わる場面なので、初役ですけれども場の空気を変えることができれば良いと思っています。
 夜の部は『角力場』で山崎屋与五郎という“つっころばし”の役をやらせていただきます。これは結構年齢が上の方で熟練された方がやられることが多いのですが、私自身も体が大きいので、体の殺し方、使い方を勉強しまして、濡髪との対比ができるようにしていきたいと思います。
 『鈴ヶ森』の権八は名だたる名優の方々がたくさん演じられている演目でございます。私自身も“だんまり”の中で立廻りをするということはあまり経験がないので、中村梅玉のおじさまに教わりまして、しっかりと勤めることができればと思います。また、舞台が暗がりで砂浜ということで、舞台上は地舞台ですけれどもお客様にはそのように映るように見せていきたいなと思います。
 『棒しばり』の大名は初役ですけれども、松也兄さんと巳之助兄さんが本公演や勉強会でなさっているので、ある種固まっているものがあると思います。その中に飛び込んでやらせていただくので、二人に負けないような雰囲気を出していければと思います。


【中村錦之助】
 2年続けて出演させていただきます。気持ち的には若い人達と一緒になって、皆様に楽しんでいただけるお芝居を作って行きたいと思っております。歳は凄く上なのですけれども、気持ちはまだ20代のつもりでおります。

 『鈴ヶ森』の幡随院長兵衛は二度目なのですけれども、最初に去年7月に大阪松竹座で片岡孝太郎さんの白井権八でやらせていただきまして、何で私が長兵衛なのかと思ったぐらいびっくりしました。もうこれきり来ないだろうなと思っていたら、次は息子とやることになりました。普段は権八の方が得意とするような役柄なのですけれども、息子と一緒に出ることでお客様に楽しんでいただけるように、それでいて長兵衛と権八に見えるように二人で作っていきたいと思います。親子でやるには、私の得意なものを隼人がやるのでそっちばかり目にいくと思いますが、舞台に出たら役者同士なので少しでも大きな長兵衛になるように、江戸っ子らしい長兵衛になるように勤めたいと思います。