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中村東蔵さんが重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定されます


 7月15日(金)、重要無形文化財保持者(人間国宝)に中村東蔵さんら5人を認定するよう答申されたことが発表されました。

【中村東蔵】
 お話をいただき、びっくりするのは当たり前ですけれども、同時に大変に嬉しく思いました。そして、まず、私の師匠であり芸養父の六代目中村歌右衛門に報告させていただきました。多分、喜んでくださる反面、「お前さんが文化財?」と鼻で笑われてしまいそうです。
 また、歌舞伎の教養を仕込んでくれた義理の兄の六世藤間勘十郎、この道に誘ってくれた藤間紫の姉もきっと喜んでくれていると思います。また、私に関ってくれた皆さん喜んでくださると思いますが、一番喜んでくれるのはきっと母ではないでしょうか。

 いろいろな役をやってきました。皆さん女をやったり男をやったり幅が広いと言ってくださいますけど、この頃は段々と幅が狭くなってきまして、もうお爺さんとお婆さんばかり(笑)。好きな役は、立役では『江戸城総攻』の益満休之助が大変気に入っております。自分でもやっていて気持ちが良いと思っていましたが、何度か演じる度に過去の記録ビデオを見て、若いのに我ながらよくやっているなと思ったほど面白くできていました。
 女方の役が多いので、皆さんも女方のイメージが強いと思いますが、どちらかというと今でも女方は不得手です。それでも『盛綱陣屋』の微妙、『引窓』のお幸とかはそれぞれ面白いと思っています。『絵本太功記』の皐月も、似たようなお役ですが、やっていて面白かったなと思います。

 私は只々芝居が好きで、ともかく小さい時から芸事の環境には非常に恵まれていたと思います。私たちの世代は、芸で身を立てるというのは、普通は反対されることが多かったと思います。私の場合は、周りは「やりなさい、やりなさい」と言いますし、子役で出演すれば「良かったよ」とおだてられて、そうやっているうちに歌舞伎の世界に入ることになりました。
 私が入る前に、歌右衛門のお兄さんのところに私の兄が中村藤太郎という名で芸養子に入っておりまして、そんな関係でそのままお世話になることになりました。お兄さんにどんどん役を付けていただいて、とにかく、好きなことをやれるのだから嬉しいなという毎日で、いつの間にか歌舞伎役者になって五十数年も過ぎておりました。こうしてなれたのも成駒屋のお兄さんのおかげだと思っています。

 前は舞台に出る時は、ああしよう、こうしよう、というテクニックをいろいろと考えていましたけれど、今はどの先輩も言うように、気持ちなんだなということをやっと実感しています。様々な役を演じることができたのは、やはり工夫だと思います。それと、こんな役も出来るんだぞという挑戦する気持ちでしょうか。
 やはり、役者としてやりたいのは主役ですけどね。主役をやりたいと思っているうちに、そうじゃない役がどんどん来て、でも好きだから、何でもやってしまう内に脇役になってしまいまして・・・その脇役のおかげで今回のお話をいただくことができましたから、そう思うと脇役も悪くはないなと思っています。