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国立劇場3月新派公演『遊女夕霧』『寺田屋お登勢』出演者が意気込みを披露


 国立劇場3月新派公演は『遊女夕霧』『寺田屋お登勢』の上演です。国立劇場では15年ぶりとなる新派公演を前に、水谷八重子、波乃久里子、中村獅童、市川月乃助が意気込みを披露しました。

【水谷八重子】
 母が2度勤め、凄く好きでしたが中々演じるチャンスがないまま逝ってしまった『寺田屋お登勢』。そのお登勢にもう一度私が挑戦できる、こんな幸せなことはございません。しかも、龍馬には獅童さんをお迎えします。多分、錦兄(萬屋錦之介)を思い出して泣いてしまうのではないかって、そんなふうに思います。
 世の中を変えようとしている若い人たちがいる中で、昔からある古い船宿の女将が若者を静かにそれとなく応援している。その中で龍馬という一人の青年に、何とも言えない「母性愛」でしょうか、愛を感じて世話をしていくという。「あなた達はこれから世の中を変えていく」そういう思いが、今の世の中ととても重なるような気持ちがして・・・本当のお登勢になりたいと思っております。

 今回は出演しませんが、私も夕霧を勤めたことがあります。その時の円玉の女将さんが私の母でございまして・・・本当にひどい脇役でした(笑)。自分は脇に回っているのだから目立つまいという気持ちがもの凄く強くって、それが逆に邪魔になる。そんな思いで、毎日、親子喧嘩の絶えない、『遊女夕霧』=「親子喧嘩」でございました(笑)。


【波乃久里子】
 初代水谷八重子先生が大好きだった国立劇場での公演ということで、気が引き締まります。国立劇場での新派公演は15年ぶり、きっと先生が天国から導いてくださったのではないでしょうか。
 夕霧は何度か勤めていますが、今回の与之助は月乃助さん。夕霧が一生懸命円玉を口説き落としてハンコをもらっていく・・・きっとフレッシュな気持ちで勤めさせていただけると思います。

 『遊女夕霧』は花柳十種で女方さんのものです。八重子先生の夕霧も素晴らしかったのですが、私がやらせていただく事になったとき、父(十七世中村勘三郎)が「これだけは八重ちゃんの真似はしないで、花柳十種でやっておくれ。」といって私に細かく教えてくれました。
 弟の十八代目勘三郎が円玉になったり、与之さんになったり相手をしてくれたのですが、その内に弟が「間が悪い!」と父に怒られて・・・それぐらい熱心に教えてくれました。ですから私の夕霧は、勘三郎と花柳先生のミックスしたものになっています。

 芸は人なりと言いますが、月乃助さんは本当に素晴らしい人。新派に入ってくださってありがたく思っています。どの役でも目が本当にその役になっている、そんな月乃助さんが大好きですし、清潔でいらっしゃるから母親役も恋人役も楽しい、本当に幸せだと思います。


【中村獅童】
 私も国立劇場に出演させていただくのは久しぶりです。新派に出させていただくのも初めてですし、いろいろなことを勉強させていただきたいと思っています。

 坂本龍馬は、今でも多くの日本人に愛されていて、現代においてもやっぱり魅力的な方だったんだと思います。時代を切り拓いていこうという、あの激動の時代を生き抜いたエネルギッシュで男らしい、俳優から見ても演じ甲斐のある人物を精一杯演じさせていただきたいと思っております。
 錦之介の叔父が死ぬまで「もう一度、俺は復活して、また舞台に立つ」と言っていたのを幼心によく覚えています。俳優としては足元にも及びませんが、舞台にかける情熱、演じる喜び、そういったものを胸に秘めながら、一歩でも叔父に近づけたらいいなと思っております。八重子先生の胸を借りるつもりで精一杯やらせていただきます。


【市川月乃助】
 当月、三越劇場にて「初春新派公演」に出演をさせていただいております。この公演から、約30年お世話になりました歌舞伎界から劇団新派に移籍をさせていただきました。1986年に、国立劇場の歌舞伎俳優養成所の門を叩き、今に至るわけですが、国立劇場というのは私にとって最終学歴の地だと思っております。そんな母校に、新派の俳優になってこんなにも早く出演できるとは夢にも思っていませんでした。

 『遊女夕霧』の朗読劇を一度やらせていただいたことがあり、その際に川口先生の「人情馬鹿物語」を全編読ませていただきました。円玉の家を中心に、人情味豊かな江戸の風情の残る多彩なキャラクターが登場して、本当に面白い小説です。与之助は、女に一途な愛を貫き通させる男、そのような役作りを心がけて情の深い与之助にしたいと思っています。