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幸四郎、染五郎が意気込みを披露~国立劇場12月歌舞伎公演『通し狂言 東海道四谷怪談』


 12月国立劇場では『 通し狂言 東海道四谷怪談』が上演されます。公演に先立ち制作発表が行われ、松本幸四郎市川染五郎が意気込みを語りました。

【松本幸四郎】
 『四谷怪談』は「怪談劇」といわれますが、最近はお客様も、仕掛け・ケレンのお化け芝居というとらえ方だけではなく、歌舞伎劇として面白いお芝居だなと思い始めていらっしゃるのではないでしょうか。
 『四谷怪談』と『忠臣蔵』は裏表、本当に歌舞伎芝居というのは題材の取り上げ方が、現代にも劣らなく生き生きとしています。しかもこの二つがちゃんと混ざり合っていく。落ちこぼれていく民谷伊右衛門が、伊藤家つまりは高師直家に使えるためにお岩を振り、お梅という女を娶る。それに対するお岩の呪いというものが伊藤家を通じて吉良家に通じるという凄さ。今回の上演で、鶴屋南北の作り出した「江戸の都市伝説」が平成の世に甦えるような気がしてなりません。

 私は“悪の華”民谷伊右衛門を勤めます。赤穂浪士の忠士に加えられることのなかったアウトローの姿を最後まで演じ通したいと思います。
 伊右衛門は色悪と言われております。色悪という言葉は、役者の雰囲気、姿形から生まれた言葉だと思います。「色悪という役だから、それらしくやる」というのでは魅力が出ません。ですから、色悪とか、歌舞伎の悪とか、伊右衛門とかということはあまり考えずに、“幸四郎の持つ悪人としての魅力”をお見せして、「ああ、これが歌舞伎の色悪と言われるものか」とお客様に感じていただきたいと思っています。




【市川染五郎】
 12月国立劇場に出させていただくにあたり『四谷怪談』というお話を初めて伺った時に、びっくりしたというよりは、何年も前から父が「冬に四谷怪談を」と話しておりましたから、ついにこの日が来たか、という思いでおりました。
 まず忠臣蔵の刃傷(にんじょう)があるというのが、この悲劇が生まれた大元にあります。ですから、南北は書いていませんが、今回、幕開の「額堂」の前に新たな場面を作り、仇討ちに生きる人、伊右衛門のように悪に走る人が生まれてしまったことをお見せします。そして最後には討ち入りの場面を付けるなど、打合せを進める間に、お岩・与茂七・小平の三役であったのが、いつの間にか由良之助、そして南北も演じる五役となってしまいました(笑)。

 仕掛けでは「隠亡堀の戸板返し」や「庵室の提灯抜け」が有名ですが、それも大きく変えようと思っています。「戸板返し」では、戸板の表と裏に打ち付けられているお岩と小平が、もっと良くわかるように、また、「提灯抜け」では、360度提灯が見える中からお岩が出てくるように、さらに幽霊になってからのお岩は地に着かず、浮いていられるような仕掛けも考えています。
 現在上演されている『四谷怪談』とは違う『四谷怪談』、また新たな、もう一つの『四谷怪談』というものを誕生すべく努めてまいります。お楽しみに。