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新派六月公演『新派名作劇場』春猿ら出演者が思いを語りました


 6月三越劇場「新派名作劇場」では、『十三夜』『残菊物語』という、「恋」をテーマとした二作が上演されます。公演に先立ち合同取材会が行われ、水谷八重子、波乃久里子、松村雄基、市川春猿が公演への思いを語りました。

【水谷八重子】
 先日、溝口監督、花柳章太郎先生の映画『残菊物語』を拝見して、映画の出来があまりに素晴らしくて・・・怖くて足がすくんでおります(笑)。母(初代水谷八重子)の最後の『残菊物語』よりも、私の方が年上ですることもあり、春猿さんと新しく作り直していくつもりで取り組んでいます。
 人間的な暖かみのある、生活感ある『残菊物語』をと思っております。もう一本の『十三夜』はクリスタルのような、エッセンスを大事に演じる抽象舞台ですから、対照的に、細々とした人間の肌の臭いみたいなものを出していきたいと思っています。
 今年はデビュー60周年、八重子襲名20周年の記念の年、あわせてレコーディングも行っています。(初代)水谷八重子なしに花柳章太郎は語れない、花柳章太郎なしに水谷八重子は語れないと言われますが、波乃久里子なしに二代目八重子は語れないと言われるようになりたいと思っています。


【波乃久里子】
 『十三夜』の原田せきは5回目、今回は尾上墨雪先生が演出に加わって下さり、もう一つ深く新しいものができると思っています。そして、松村さんという素敵な方の力をお借りして、月光がさすような、素敵な芝居にしたいと思っています。
 弟(十八世中村勘三郎)が亡くなる少し前、新派の作品を見せてといわれ数本貸したのですが、『十三夜』のビデオを手にしながら、目も鼻もグジャグジャにして「こんな良い芝居、なんでもっとやらないんだ」って(笑)。今回の上演のアイディアは弟が考えてくれました。
 『残菊物語』はお里、私の曾祖母のお役です。私の名前の「久里子」の里はこのお里から頂いています。非常に厳しい人だったそうで、曾祖母を敬いながら勤めさせていただきます。


【松村雄基】
 久しぶりに新派公演に参加させていただきます。最近の舞台では年長のことが多いのですが、ここに来ると諸先輩方がいる安心感と緊張感があって、苦しさもありますが、とても楽しいです。この気持ちをいい形にしてお客様にお見せして、喜んでいただける舞台を勤めたいと思っています。
 高坂録之助のセリフは、根底が全てせきへのラブコール、愛の告白です。愚痴っぽいセリフの中にも、その思いがお客様に見えなければいけません。いまはお稽古で苦しんでいますが、それは私の栄養にもなっていて、役者としてこれから進んでいく上での良い勉強になっています。


【市川春猿】
 本格的な立役は2014年1月、初春新派公演『明治一代女』以来2度目で、まだまだどうなってしまうのかという心配を持ちながら、日々お稽古に励んでおります。また、今回は菊之助という、歌舞伎の俳優のお役なので、歌舞伎の役者が歌舞伎の役者の役ができないと困るなと言われないように、と思っています(笑)。
 お稽古場は、良いお芝居を創ろうという雰囲気がとてもあります。今回、初めて松村さんとご一緒させていただきますが、年齢的に少し松村さんが上ですので、お説教される場面では、本当にお兄ちゃんに怒られているような気持ちになります。舞台でご一緒するのは初めてで、今回それも楽しみです。