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春猿が思いを語りました~新派六月公演『新派名作劇場 残菊物語』


 6月三越劇場「新派名作劇場」では、水谷八重子のお徳、市川春猿の菊之助による『残菊物語』が上演されます。
 5月1日(金)には、デジタル修復版が完成した、巨匠・溝口健二監督による映画『残菊物語』の試写が行われ、水谷八重子、市川春猿が公演への思いを語りました。

【水谷八重子】
 舞台は「悲恋物」ですが、映画は「芸道物」としてとらえているので、“昔の歌舞伎の世界”を見せてくれる面白さがあります。さらに日本人の生活習慣が実にきめ細かに撮らえられていて、しかも東京と大阪ではこんなに違うという東西の違いまで、映像に残していてくださっていて嬉しくなってしまいます。カメラアングルは小津作品などとは全く違い、全て見切れるようにカメラを置き、ワンシーン・ワンカットでお話が進んでいきます。こうした素晴らしい技法に改めてショックを受けました。

 『残菊物語』は歌舞伎という特殊な世界を描いていますので、やはり歌舞伎の血を持った方じゃないと、この菊之助という役は、なかなかできないと思います。春猿さんと協力して、私たちだけにしかできない作品を作り上げていきたいと思っています。
 時代屋の店先みたいな、昔の生活を生きて見せる、というのが“新派”です。ですから日本人の生き様を見ていただくためにも、新派を後世に伝えることは、とても大切な役目だと思っています。


【市川春猿】
 溝口監督の長回しの映像を拝見すると、きっと舞台と同じくらい演じる役者さんにも緊張があっただろうなと思います。さらに、出演者の多さ、セットや衣裳の豪華さ・・・なんとも贅沢につくられていますし、今のような高度な映像技術が無い中で、あれだけの作品を撮って残すということのすごさを感じました。

 初役で菊之助を勤めます。新派の世界の立役にはすごく魅力的な男性が多いのですが、今回は“女性に支えられて生きていく男”という感じが出せるように、そして二人の愛情というものが、どんどん強く押し出されるような舞台にしたいと思っています。
 新派の作品には、日本人の良さ、日本女性の奥ゆかしさや力強さなどを教えてくれる、すばらしい作品が数多くあります。これからの子どもたち、日本人の心を豊かにしていくためにも、新派の良さを伝えたいと思っています。


 なお、5月18日(月)から始まる第68回カンヌ国際映画祭のクラシック部門「カンヌ・クラシック」で、デジタル修復された『残菊物語』が上映されことも決定しました。