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10月国立劇場『京乱噂鉤爪』制作発表が行われました

 国立劇場10月歌舞伎公演 『京乱噂鉤爪(きょうをみだすうわさのかぎづめ)』の制作発表記者会見が行われ、松本幸四郎、中村梅玉、市川染五郎、脚本の岩豪友樹子が出席し公演への思いを語りました。


岩豪友樹子
 昨年の乱歩歌舞伎第一弾『江戸宵闇妖鉤爪(えどのやみあやしのかぎづめ)』では、若い方々も沢山ご来場いただき、また、皆様のお力で幸運なことに大谷竹次郎奨励賞もいただくことができました。今回、乱歩歌舞伎第二弾を上演することができ、とても幸せに思っています。

 『京乱噂鉤爪』は、乱歩の原作『人間豹』にも無い物語になり、人間豹・恩田がどのような最期を迎えるかが一番のポイントになると思います。女性ファンの方が恩田に対して母性本能をくすぐられ、彼は悪いけれど弱い部分があって守ってあげたい・・・恩田を殺さないで、死なないでと思っていただけるようになれば、私としては理想的です(笑)。それをどこまで表現できるかがポイントだと思っています。


松本幸四郎
 皆様方の情熱とご協力によって乱歩歌舞伎第二弾が上演できることになり、大変嬉しく思っております。テレビドラマでも主人公の死が迫ると「殺さないで」という投書が届くようになると聞きますが、前回お客様が、主人公の恩田に、そういう思いを持っていただいていることを感じました。昔から哀愁を持ったヒーローは多くの人に愛されます。民衆に慕われ「死ぬな!」と思われながら最期を迎える恩田をぜひ観に来ていただきたいと思っています。

 『京乱噂鉤爪』のように、新作歌舞伎を生み出すことは大変難しいことです。しかし新作がいかに歌舞伎にとって大事か、それが歌舞伎に大きな力を与えているということも確かな事です。今回第二弾が上演できることは、そういった意味でも大切な事だと思っています。


中村梅玉
 昨年、乱歩歌舞伎の評判を伺っておりましたので、今回この公演に参加することができ、とても嬉しく思っております。以前、岩豪先生とは平成15年、国立劇場の新作歌舞伎『斑雪白骨城(はだれゆきはっこつじょう)』で演出・出演をさせていただいており、また今回、幸四郎さん、染五郎さんとの共演を本当に楽しみにしております。

 今回勤めさせていただく、陰陽師・鏑木幻斎は、乱歩の世界独特の妖しい存在です。そのような雰囲気を存分に出していきたいと思っていますし、人間豹・恩田の最期に哀愁を持たせるためにも、鏑木がとても憎く「あいつさえいなければ・・・」とお客様に思っていただけるように演じたいと思っています(笑)。



市川染五郎
 原作の『人間豹』では最後、恩田が気球に乗って飛んでいきますが、前作では「また会おう!」の言葉を残して大空に消えていきましたので、今回また皆様にお会いできることになりました(笑)。

 前作では小説の上でのイメージを立体化した人間豹・恩田が誕生し、今回、その恩田が最期を迎えます。第三作はありません(笑)。前作の乱歩歌舞伎をさらにグレードアップさせた作品になるように、懸命に勤めたいと思っております。




――「乱歩歌舞伎」続編の魅力

岩豪
 続編ですから、前作を観ていただいた方に楽しんでいただくのはもちろん、今回初めてご覧になる方にも判りやすく面白い作品でなくてはならないと思っています。

 乱歩歌舞伎らしさを出すため、乱歩の別の作品からちょっとした言葉を取り出してセリフの中に入れたり、他に何か無いかなと色々探したり、乱歩らしさを作品の中に散りばめています。それは大変な事でしたが、とても楽しくて面白い作業でした。


幸四郎
 再演や第二弾というのは、なかなかやろうと思っても出来ることではなく、役者にとって大変ありがたいことですし、情熱を持って前作を創り上げてくれたスタッフの方々とまたご一緒できるのもとても嬉しいことです。

 役者は何度勤めた役でも、初めての役でも、その役を通してお客様に感動や喜び、希望や勇気を与える、この一点しかないと思っています。第二作となるこの『京乱噂鉤爪』では、さらに進化した、歌舞伎と乱歩の面白いコラボレーションをお見せし、皆様に「良いものを観て得をした」と思っていただけるように勤めたいと思っています。


染五郎
 乱歩を歌舞伎にという考えが形になるのはまさに夢のようで、目の前に絵として現れていく過程はとても面白いものでした。今回も自分の書いた原案が、岩豪先生や父の手に渡り、思ってもいない方向に作品が進んでいく面白さを改めて感じています。

 続編だからといって、前回やった事は避けようという考えにとらわれずに、面白かったものはそのまま次の作品に引き継ぐということはとても大切なことだと思います。今回も宙乗りをさせていただきますが、それは前半に披露してしまいます。恩田が死ぬクライマックスでは、宙乗り以上に迫力あるものを考えていますので、ぜひ楽しみにしていてください。

公演情報は こちらをご覧下さい。